研修、講演のご案内| 連載『「⼈が育つ現場」考』バックナンバー| 紙上講座 現場リーダーのための「上司力」養成講座(全12回)

研修サービスのご案内

㈱通信⽂化新報では「通信⽂化新報」を媒体として、郵便局を中⼼とした皆さまに様々な情報を発信しております。

この情報発信の媒体に加え、皆さまの組織、個⼈の研鑽のお役⽴ちを⽬的として、前川孝雄⽒が代表を務める㈱FeelWorksと提携し、研修や講演を提供する研修事業を⾏っております。紙⾯掲載の情報と合わせてご活⽤いただければ幸いです。

研修サービスのご案内

新型コロナウイルス感染拡⼤の影響により、⼀つの会場に多くの参加者を集める講演や研修の開催は難しい状況です。そこでぜひ導⼊いただきたいのが、FeelWorksのオンライン講演・研修です。テレビ・Web会議ツールの多彩な機能を効果的に活⽤し実施します。講演はどのプログラムでも実施が可能。研修ではグループワークも集合研修・講演と遜⾊ないレベルでご提供します。

対象・テーマ別講演シリーズ
【トップの上司⼒講演】

部⾨・事業部などのトップとして、多様な部下⼀⼈ひとりの能⼒をフルに発揮させ、組織成果を最⼤化するための「トップのあり⽅(⽬指すべきトップ像)」をお話しする講演です。

現代の会社組織は、その多くが短期的な業績向上に追われ、⻑期的な視点で⼈と組織の成⻑を⽀援する余裕を失っています。

しかし、⼈材育成や組織開発なくして、ビジネスの持続的な発展などありえません。

そこで本講演では、⼈材育成の⽬的・意義、組織のトップに求められる⼼構えや姿勢などについて、講師の実体験を交えながら紹介していきます。

<プログラム例/2時間程度>

01 業績向上と人材育成・組織開発の狭間で

02 管理職が抱きがちな部下に対するイメージ

03 これからの組織はどう変わるべきか

04 組織成果を最大化するトップの上司力

05 上司力実践の先にある醍醐味

【現場の上司⼒講演】

多様な部下を育て、活かすための「上司のあり⽅(⽬指すべき上司像)」をお話しする講演です。

現代の管理職はその9割がプレイングマネジャーであり、短期的な業績の維持・向上と部下育成の狭間で⽇々忙殺されています。

しかし、そんな苦境を打開する鍵こそ、他でもない部下育成であり、部下育成なくしては、組織の持続的な成⻑もありえません。

そこで本講演では、部下育成の⽬的・意義、上司に求められる⼼構えや姿勢などについて、講師の実体験を交えながらご紹介していきます。

<プログラム例/2時間程度>

01 業績向上とマネジメントの狭間で奮闘する上司たち

02 日本型ダイバーシティ時代の到来

03 管理職が抱きがちな部下に対するイメージ

04 一人ひとりを活かす現場の上司力

05 現場で明日から試せる上司の仕掛け

【ダイバーシティマネジメント講演】

職場では、役職や雇用形態、年齢、性別、障害の有無、国籍やルーツ、子育てや介護との両立など、立場や環境や価値観の異なる様々なメンバーが共に働いています。

上司には、これらの多様な部下を束ね、互いに援け合い、一人ひとりが働きがいを持てる職場環境づくりと、メンバーを効果的に支援・育成する役割が求められます。

本講演では、ダイバーシティマネジメント(多様性のマネジメント)の⽬的・意義、上司に求められる⼼構えや姿勢などをお伝えします。

<プログラム例/2時間程度>

01 ダイバーシティマネジメントとは何か?

02 多様な人材が活躍できる組織とは

03 多様な部下を育て活かす心構え

04 指示・管理から共感・支援へ

05 まとめ・質疑応答

2019年6月・日本郵便㈱東京支社開催の局長マネジメント研修

【プロフェッショナルマインド講演】

中堅社員に求められる「⾃律的な働き⽅」についてお話しする講演です。

若⼿から中堅へと年次が上がり、周囲の期待は「確実に仕事を覚え、こなす」ことから「⾃ら仕事・役割を創り出し、周囲を巻き込み、成果を上げること」へと⼤きく変化していきます。

つまり、真のプロフェッショナルへの脱⽪を強く求められるようになるのです。

本講演ではその実践のために⽋かせない⼼構えや仕事に取り組む姿勢について、具体的な事例を交えながらご紹介していきます。

<プログラム例/2時間程度>

01 中堅社員たちの悩みと迷い

02 次のステップに向けて大切にしたい働き方

03 上司を読み解く5つの思考

04 ケースで学ぶ「壁を越えてきた先輩たちのストーリー」

05 プロフェッショナルとは?

【50代からの働き⽅講演】

50代前後の会社員にとって、⻑時間労働や転勤などもいとわず働いてきたハードな会社員⽣活も第4コーナー。

平成の30年間、低迷し続けてきた経済環境の下、期待していた出世や給与も得られていないと感じる⼈は少なくありません。

役職定年や定年退職が⾒えてきたと思いきや、「⼈⽣100年時代」「定年延⻑」などの⾵潮が⾼まり、ゴールが先延ばしになったとモチベーションが下がる⼈も増えています。

確かに、得られなかったものや失ったものは多々ありますが、実は⻑年組織で働いてきたからこそ得られたものもあります。

⼈⽣100年ということは、やりたいことを⾒つけ挑戦する時間が⽣まれたとも考えられます。

艱難⾟苦を我慢してきた⼈⽣前半戦の20〜30年から解放され、働きがいを育み、これからの充実した20〜30年の⼈⽣後半戦を作っていくために何が必要なのか。

会社員のうちにやっておくべきことは何か。

50代からの働き⽅について、その⼼構えと準備のポイントをお話します。

<プログラム例/2時間程度>

① 40~50代世代が働いてきた平成の30年

② 会社員人生で得たものは何? 暗いニュースに惑わされるな

③ そもそも、なぜ働いているのか?

④ プライドの物差しを給料・職位から働きがいに変えよう

⑤ しがらみから自分を解放! 50歳からの20年の働き方

⑥ 会社員生活でやれることはまだまだある

<プログラム例/2時間程度>

[Q1] 自分の人生があと1年だとしたら、何をやりたいですか?

[Q2] なぜ、そのやりたいことに挑戦しないのですか?

[Q3] やりたいことができない本当の理由は何ですか?

[Q4] 名刺がなくても付き合える社外の知人は何人いますか?

[Q5] 会社の外でも通用する、自分の強みは何ですか?

[Q6] その強みを磨き、不動にするためには何が必要ですか?

[Q7] 会社員のうちに何から始めますか?

上司⼒研修シリーズ
◆中間管理職向けリーダーシップ研修
部下を育て、活かす「現場の上司力」

上司が部下との信頼関係を築くうえで必要な心構えや姿勢を定めることに注力。グループワークを通じて受講者同士が意見を交わし、内省を深め、「上司のあり方(目指すべき上司像)」を明確に言語化できるまでブラッシュアップしていきます。

<プログラム例/1日版・現場の上司力研修>

01【講義】業績向上とマネジメントの狭間で奮闘する上司たち

02【ワーク】現場のマネジメント課題を共有する

03【講 義】日本型ダイバーシティ時代の到来

04【講 義】管理職が抱きがちな部下に対するイメージ

05【ワーク】マネジメント課題の原因・背景を深堀する

06【ワーク】こんなときどうする? 上司力クイズ

07【講 義】一人ひとりを活かす現場の上司力

08【ワーク】上司としての「あり方」を定める

09【講 義】現場で明日から試せる上司の仕掛け

10【ワーク】上司としての「やり方」を決める

11【ワーク】上司力決意表明シートを作る

12 まとめ・質疑応答

【オンライン版】部下を育て、活かす「現場の上司力」

テレビ・Web会議ツールの多彩な機能を効果的に活用し実施します。講義はもちろん、グループワークも集合研修と遜色ないレベルでご提供します。

[所要時間]

3~7時間程度

[受講対象]

・管理職経験者全般

・現場従業員を指揮下に置く課長相当の方 

・組織開発・部下育成の課題を解決したい方

[使用ツール]

ZOOM[プログラム]

01. 講義/業績向上とマネジメントの狭間で奮闘する上司

02. グループワーク/現場のマネジメント課題を共有する

03. 講義/メンバーの価値観を読み解く鍵

04. グループワーク/課題の原因・背景を深掘りする

05. 講義/一人ひとりを活かす現場の上司力

06. 個人ワーク/上司としての「あり方」を定める

07. 講義/現場で明日から試せる上司の仕掛け

08. グループワーク/上司としての「やり方」を決める

09. 個人ワーク/上司力決意表明シートを作る

◆上級管理職向けリーダーシップ研修
組織成果を最大化する「トップの上司力」

組織ラインを信頼関係で結ぶうえで求められる心構えや姿勢を定めることに注力。グループワークを通じて受講者同士が意見を交わし、内省を深め、「トップのあり方(目指すべきトップ像)」を明確に言語化できるまでブラッシュアップします。

<プログラム例/1日版・トップの上司力研修>

01【講義】業績向上と人材育成・組織開発の狭間で奮闘するトップたち

02【ワーク】現状のマネジメント課題を共有する

03【講 義】管理職が抱きがちな部下に対するイメージ

04【ワーク】課題の原因・背景を深堀する

05【講 義】これからの組織はどう変わるべきか

06【講 義】組織成果を最大化するトップの上司力

07【ワーク】トップとしての「あり方」を定める

08【講 義】マネジメントからリーダーシップの時代へ

09【ワーク】トップとしての「やり方」を決める

10【講 義】上司力実践の先にある醍醐味

11【ワーク】上司力決意表明シートを作る

12 まとめ・質疑応答

◆上司力鍛錬ゼミ(全3回)

第1回 メンバーを強く動機づけする

●プログラム例 (7時間程度)

01 【講 義】トップのビジョン創りに必要な未来志向

02 【ワーク】トップとしての未来志向を養う~自部門ビジネスの未来を予測する~

03 【講 義】部下のやる気を引き出す 「チームビジョン」 を考える

04 【ワーク】3年後の組織ビジョンを言語化する

05 【ワーク】組織ビジョン作成と浸透の準備~傾聴とファシリテーションの活用~

06 まとめ・質疑応答/次回までの課題説明

第2回 一人ひとりの強みを活かす

●プログラム例 (7時間程度)

01 【ワーク】 課題の進捗共有と相互アドバイス

02 【講 義】 強みとは何か。なぜ強みを活かすべきなのか

03 【ワーク】 コアメンバーの強み自慢(キャッチフレーズ付け)

04 【ワーク】 一人ひとりの強みを活かす組織をデザイン

❶目的の明確化❷お役立ちフローの俯瞰❸強みを活かす人材配置・定義❹コミュニケーションの流れ設計

05  まとめ・質疑応答/次回までの課題説明

第3回 自律的な職場風土を醸成する現場の応援設計

●プログラム例 (7時間程度)

01 【ワーク】 課題の進捗共有と相互アドバイス

02 【ワーク】 組織ビジョンスピーチのロールプレイング

03 【講 義】 現場を応援する仕掛けとは何か

04 【ワーク】 新たに考えた仕掛けを共有する

05 【ワーク】 実施する仕掛けを決める

06 まとめ・質疑応答

eラーニング・通信講座など
◆eラーニング「パワハラ予防講座」

準備中

◆eラーニング「新入社員のはたらく心得」

準備中

◆通信講座

準備中

研修、講演のお問合せ

下記項⽬をご⼊⼒の上、お問い合わせ下さい。(※は必須です。)

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お問い合わせ内容 ※

連載『「⼈が育つ現場」考』バックナンバー

株式会社FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師 前川孝雄

「現場で人を育てることは、ここ十数年さらに難しくなっています。要因の一つは多様性(ダイバーシティ)です。少子高齢化で若者が減るなか女性活躍推進が叫ばれ、期間雇用労働者の増加、雇用延長によるベテラン社員層の増加、外国人労働者の増加など、働く人の多様化が進んでいます。・・・しかし、こうした変化を避け、懐古主義で昔に戻ることはできません。環境変化を受け入れたうえで、現場で人を育てることを諦めず、どう取り組むかに創意工夫が必要になってきているのです。・・・本連載ではこうした時代の変化を踏まえ、これからの「人が育つ現場」のあり方を考えていきたいと思います。」

2019年7月15日連載第1回の抜粋です。それから月に2回の連載が1年経ちました。この1年、開始当初の問題意識とはまた異なる大きな社会環境の変化がありました。現代人が経験したことのない疫病「新型コロナウイルス」です。

これらの環境変化を踏まえた前川孝雄氏の連載を振り返ることができるようバックナンバーを掲載しました。

ご意見、ご感想などはこちらへ

連載の参考にさせていただきますので、忌憚のないご意見・ご感想などをお寄せください。

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紙上講座 現場リーダーのための「上司力」養成講座(全12回)

株式会社FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師 前川孝雄

本物の「上司力」を探求する場に 〜紙上講座の連載開始にあたって〜

 この度、日本郵政グループの現場リーダー向けに紙上講座を連載できることは、とても感慨深く光栄です。私が1990年代に前職リクルートで様々な就・転職・キャリア支援メディア編集長時代から探究を続け、最初に独自の「上司力」を打ち出したのは、2006年の『上司力トレーニング』(ダイヤモンド社)です。その後「人を大切に育て活かす社会づくりへの貢献」を志して、2008年に人材育成支援の株式会社FeelWorksを設立。以来、日本郵政グループをはじめとした大企業を中心に400社以上で「上司力研修」「上司力鍛錬ゼミ」を開講し、管理職や経営者の育成・支援に打ち込んできました。書籍出版も30冊以上となり、10月には最新刊『本物の「上司力」』(大和出版)も出版します。

 日本郵政グループとのご縁では、2012年から日本郵便東京支社で、主に基幹局の局長や部長を対象に「上司力」向上の研修を開講し、毎年、多くの受講者の皆さんと切磋琢磨してきました。それだけに郵政現場への親近感は強く、あらためてこの紙上講座でご一緒できることは嬉しい限りです。

 今後1年間、月1回の連載を通して、私が四半世紀かけて探究してきた本物の「上司力」を皆さんに学んで頂きます。(2020年9月)

第1回

いま求められる「上司力」とは?

【紙上講座(新聞掲載)】

コロナ禍で浮き彫りになった上司の悩み

 コロナ禍でリモートワークが広がり、あらためて「上司力」―現場管理職のマネジメントとリーダーシップの力が問い直されています。

 新型コロナウィルス感染防止のため、多くの企業が十分な準備の間もなく、急きょ在宅勤務などのリモートワークを導入しました。そうした中、上司に部下マネジメントへの不安を訊ねた調査では、「生産性が下がっているのではないか」(48.0%)、「報連相をすべき時にできないのではないか」(32.7%)、「仕事をサボっているのではないか」(32.7%)、「仕事ぶりが見えない期間の人事評価をしにくいこと」(30.0%)、といった回答が寄せられました(「テレワークと人事評価に関する調査」[2020年4月・あしたのチーム]。テレワークはリモートワークと同義)。すなわち、「部下の仕事ぶりが見えず、報連相に不安を持ち、サボってはいないかと疑心暗鬼に陥り、人事評価にも悩む」上司の姿が浮き彫りになったのです。


 もちろん、日本郵政グループの現場をはじめ全ての職場がリモートワークを導入できたわけではありません。しかし、今後さらに多くの仕事と共に社内のマネジメントやコミュニケーション手段のリモート化、オンライン化は進むでしょう。また、調査で挙げられた上司の不安は、コロナ禍に関係なく、日々のマネジメントでの関心事ばかりです。実は、真面目で優秀なプレーヤーだった上司ほど、こうした悩みを抱えがちです。コロナ禍で新たな問題が起こったというよりも、もともとあった問題が強く顕在化したといえるでしょう。

 そして「部下の仕事ぶりが見えない」「思うように成果を上げられない」という不安と焦りから、上司は部下への監視や統制を強めがちです。実際に、リモートワークになり、熱心な上司ほど部下の仕事時間の管理を徹底し、報告を執拗に求め、仕事内容に過渡に干渉し、指示命令を多発する例や、ITツールで常時監視することで部下がメンタルを病んでしまう例なども生じています。


クイック・ウィン・パラドックスの罠

 では、この真面目な上司が陥りがちなリスクを、どのように理解すればよいでしょうか。ハーバード・ビジネススクールでリーダーシップを教えるリンダ・ヒル教授が、新任管理職にありがちな問題行動を調査分析して明らかにした「5つの落とし穴」がヒントになります。

 これは、①隘路(あいろ)に入り込む―狭い路地に迷い込んだように周囲が見えなくなり、自分で全てを解決しようとする、②批判を否定的に受け止める―部下の異なる意見を自分への批判と受け止め、聞き入れられなくなる、③威圧的である―管理職の自分に権限があるからと、一方的に命令や叱責を行う、④拙速に結論を出す―部下の意見や状況を顧みず早く解決しようと、決めつけて判断する、⑤マイクロ・マネジメントに走る―部下を自分の操り人形のように微に入り細に入り指示し、動かそうとする…という行動です。

 こうなると、部下の心は離れてしまい、やる気を失い、マネジメントは空回りし始めます。すなわち、早い成果を出そうとの焦りが、かえって成果を遠のかせるジレンマ―クイック・ウィン・パラドックスの罠に陥ってしまうのです。

 クイック・ウィン・パラドックスはコロナ禍以前に打ち出されていたコンセプトですが、部下の仕事ぶりが見えづらい焦りから、さらに起こりやすくなっているといえます。つまり、リモートワークの急速な普及によって、本質的なマネジメントの変革が待ったなしの急務になったといえるのです。これを機に、上司に求められる本来の役割を正しくとらえ直し自己変革を果たし、ウイズ&アフターコロナのニューノーマル下でも、上司の本領を発揮することが望まれます。


管理職から支援職へ

 それでは、本物の上司力はどのように身につけ、発揮すればよいでしょうか。結論から言えば、上司は性悪説で部下を監視し管理しようとするのではなく、本人の意欲と可能性を信じ、その持ち味と能力を十分開花し発揮できるよう支援する姿勢に変わることです。すなわち管理職から支援職へ自己変革すべきです。上司の本来の役割は、部下に指示命令をして従わせることではなく、部下が自律的に働ける環境を整え、一人ひとりが働きがいを感じながら成長・活躍する伴走者だと心得えましょう。

 そこで、上司が身につけ実行すべきは、次の「支援型マネジメントの5つのステップ」です。

 連載の第2回からは、これを順に解説していきます。

【 解説 】

ニューノーマル時代のマネジメント課題の背景とは?

 連載第1回では、コロナ禍によるリモートワークの急速な普及をきっかけに、鮮明に浮かび上がってきたマネジメント課題を指摘しました。しかし、これらの課題は、これまでのマネジメントにも潜在していたもので、ウイズ&アフターコロナのニューノーマル時代には、さらに顕著になるものです。ここでは、これらの課題の進行を促す、より本質的な時代背景を俯瞰しておきましょう。

日本型雇用の限界とジョブ型・成果評価型の職場へ

 背景の第一は、今後大きく進む「メンバーシップ型」雇用から「ジョブ型」雇用へのシフトの動きです。メンバーシップ型は、日本企業特有のいわゆる終身雇用体制のもと、社内での人材育成、年功による賃金アップなどを特徴としてきました。入社時に仕事の内容は確定されず、社員は会社の「メンバー」となり、人事異動や転勤などに柔軟に応じていきます。これに対し欧米流のジョブ型は、予め職務内容を子細に定め、それに見合った能力の社員を雇い、仕事に応じた賃金を支払います。仕事も評価基準も明確ですが、その仕事がなくなれば雇用契約も終了となる仕組みです。メンバーシップ型が「就社」であるのに対し、ジョブ型は本来の意味での「就職」だと言えるでしょう。

コロナ禍以前に、日本企業は経済のグローバル化と第4次産業革命などを背景に、日本型雇用の維持が困難となり、大きな流れはジョブ型へとシフトし始めています。今回のリモートワークの急速な普及も、ジョブ型への移行を加速させています。職務内容が明確なジョブ型労働は成果主義とも結びつきやすく、これまでの時間による仕事の管理・評価から、成果による管理・評価への変化の流れも促すでしょう。

そうなると、上司には、一人ひとりの社員の仕事の目的や目標をより明瞭に言語化し共有する力、そして仕事の進捗と成果を正確に把握し、的確に支援し評価する力が求められるのです。

ダイバーシティの進展とキャリア自律支援の時代へ

 背景の第二は、職場のダイバーシティ(多様性)の進展です。経済のグローバル化は日本の内なる国際化を進め、外国人労働者が増加します。また、既に叫ばれて久しい女性活躍推進もこれからが本番で、育児や介護と両立させながら仕事を継続し、職場の中核的担い手に成長できる環境整備が不可欠です。さらに、高年齢者雇用安定法の改正等により、企業には社員の70歳までの就業確保や独立の支援が努力義務化され、ミドル・シニアの活躍支援も求められます。一方、非正規社員の増加でメンバーの雇用形態は多様化し、さらに副業解禁の流れで複数の仕事を持つ社員も増えていくでしょう。社内外での多彩な働き方を認め、総合的にサポートすることが必要になります。

 若手社員は、終身雇用と年功序列が崩れ、ジョブ型に舵を切り始めた企業社会のなかで、もはや「昭和型」とは全く異なるキャリア観で働いています。会社には頼り切れないため、人生100年時代を働き抜くためのキャリアを自ら築いていかざるを得ない世代です。自分のキャリアにとっての仕事の意味や将来性を考え、働きがいを実感できる仕事を望み、副業や転職も視野に入れながらキャリアを磨いていくことに真剣です。

 以上のように、いずれの世代・背景の社員にとっても、今後は働きがいの実感とキャリア自律が共通のテーマです。そのなかで上司には、多様な部下一人ひとりを丁寧に理解し、キャリアに寄り添い、日々の仕事を支援するとともに、チームとして束ね成果を出していくという、難しいかじ取りが求められるのです。


【ご意見・ご感想をお寄せください】

 上司である皆さんが、日々職場で実感しているマネジメントの課題は何ですか? 「ご意見・ご感想」送信フォームから、本連載へのご感想と併せてお寄せください。今後の企画・執筆の参考にさせていただきます。

第2回

【STEP①】「相互理解」を深める《その1》
業務のやりとりの前に、面談で信頼関係の土台をつくる

【紙上講座(新聞掲載)】

誤解を生まないコミュニケーションを取れるように、相互理解を図る

 上司が支援型マネジメントを始める最初のステップは、部下との「相互理解」を深め、信頼関係の土台をつくることです。上司と部下が互いによく知り合うことで、相互に安心感と信頼感を持ちやすくなります。そして、上司は部下に仕事を任せやすくなり、部下は任された責任の範囲で自律的に働けるようになるのです。

 相互理解による信頼関係の形成は、今年の6月に法律が施行された職場のパワハラ防止にも繋がります。今や、誰が見ても明らかな暴力や暴言によるハラスメントは減っていますが、問題は「グレーゾーン」です。すなわち、上司が意図せず部下に行った言動の「あや」が、部下を傷つけたり萎縮させたりして、不満が鬱積して引き起こされるハラスメント・リスクを減らすのです。部下が過敏になり「ハラスメントだ」と感じるのは、往々にして上司への信頼感がないためです。信頼する上司の言葉であれば、多少厳しく、言葉足らずでも、部下は真意を受け止めやすくなります。「自分を思って叱ってくれているんだ」と感じれば、前向きに応じられるからです。

 誤解を生まないコミュニケーションが取れる関係づくりのために、上司はまず意識的に部下との相互理解を深めましょう。


最初にやるべきことは「上司からの自己開示」

 上司は部下の仕事への思いや価値観、職場内外での関心事、また家庭の育児や介護など仕事に影響する事情や悩みなどを、よく理解しておくことが大切です。そこで、部下との面談の場を設け、「傾聴」することから始めましょう。しかし、この傾聴が実際にはなかなか難しいものです。

 研修で上司の皆さんに「部下の話をじっくり傾聴しましょう」とお話しすると、早速部下を呼び出し、根掘り葉掘りと事情聴取をしてしまう例があります。しかし、部下からすれば、上司に呼ばれ唐突に「今の仕事をどう思うか」「将来のキャリアをどう考えるか」「プライベートで悩み事はないか」と聞かれても、即答できません。また、部下には上司に言いづらいことや知られたくないこともあるでしょう。そこに、上司が突然あれこれと畳みかけて質問すれば、警戒して身構えてしまうばかりです。

 そこで、部下から話を聴こうとする前に、上司の方から自己開示をすることをお勧めします。「自己紹介は自分から」と、まず上司自身がどのような考えや気持ちをもっているのか、部下に対してオープンマインドで話すのです。自分はこれまでどんな仕事の経験を持ち、どのような思いや目標を持って仕事をしてきたか。これからどのように職場や仕事に貢献したいかなど、飾らずざっくばらんに話します。また、自分をよく知ってもらうためには、どのような人生を歩んできたか、趣味や家族のことなどプライベートも含めて話すとよいでしょう。


あえて自分の「弱み」を語る

 自己開示の際に気をつけたいのは、上司が自分の武勇伝を延々と演説したり、価値観を押し付けないことです。ポジティブな話をしようとして、自分の上げてきた成果や強みや得意ばかりを強調してしまうと、部下にはプレッシャーとなり息苦しいだけです。一方で、社会状況も大きく変化しており、かつての上司の成功体験がそのまま通用するとも限りません。むしろ、部下にとって時代遅れで陳腐な話と受け止められれば、反感や失望を生み逆効果になりかねません。

 そこで、あえて自分の「弱み」をさらけ出す話をしてみましょう。「自分はこんな失敗をして、こんなことに苦しんだこともあったんだ…」といった失敗談を語るのです。また、自分が不得意や苦手なことを開示するのもよいでしょう。上司が弱みを見せることで、部下は「上司も万能ではなく、弱みや人間的な部分があるのだな」と感じ、親近感がもちやすいのです。その延長で、部下が「上司も、不得手な部分では自分を頼りにしてくれる」と思えるようになれば、上司がSOSの際にも率先して手伝ってくれるものです。また、部下自身も上司をより深く理解できれば、自己開示がしやすくなるのです。


時代感覚のズレに気をつける

 プライベートや家庭の話題にも、注意点があります。上司世代の40~50代では、配偶者が専業主婦やパートタイマーで働く場合も多く、自然と「自分が一家の大黒柱だ」と自認している人もいるでしょう。しかし、そうした感覚や価値観をベースに家族や家庭生活の話をすると、部下に強い違和感を与える場合があります。なぜなら、今の20~30代は共働きが普通であり、夫婦がパートナーシップで家事や育児を分担するのが当たり前だからです(図参照)。



 それなのに、上司が無意識のうちに自分の古い性別役割分担の意識や実状に基づく話をすると、大きな感覚のズレを感じてしまうのです。もはや、「イクメン」という言葉にすら違和感を持つ若者もいると理解する必要があります。

 なお、部下のプライベートの話題は、上司側から無理に聴き出さないことです。上司の自己開示に沿って部下が望めば、自然と話を聴く形で進めましょう。


部下との間に「共通項」を見つける

 部下との相互理解への早道の一つは、お互いの「共通項」を見つけることです。初対面の人でも、出身地や出身校が一緒だったり、同じ趣味を持っていることで話が弾み、ぐっと親近感がわいた経験はあるでしょう。人は他人との共通項が見つかると親密な関係を持ちやすく、安心感や信頼感も持ちやすいのです。上司が積極的に自己開示をして様々な経験や関心事を語る中で、あるいは部下の話を傾聴する中で、お互いの共通項が見つかればしめたものです。共通して楽しめる話題や共感し合える物事があれば会話も盛り上がり、その後も時々情報交換できるなど、相互関係はぐっと近づくことでしょう。

 部下が遠慮がちであれば、上司が自己開示した話について、何かさらに聞きたい事はないか、「質問があれば何でも聞いてほしい」と伝えましょう。また「今日の話の中で、お互いに共通すると感じたことは?」と率直に聞くのも良いでしょう。こうした投げかけや質問で共通項となる「話のタネ」をまくことが、部下の自己開示のきっかけにもつながります。

 人は相手を知らないと警戒感や緊張感が解けませんが、相手との共通項がみつかり共感点を確かめ合えれば、心の距離が一気に縮まるのです。

【 解説 】

部下への理解を深めるための「傾聴面談」のすすめ

 連載第2回では、支援型マネジメントを進めるための【STEP①】『「相互理解」を深める』の《その1》として、部下との信頼関係づくりに向けた面談による相互理解のポイントを解説しました。そこで、以下では、この面談をよりしっかりと行い、部下との相互理解を深めながら部下育成につなげていくために、私が開発した「メンバー育成計画シート」(図参照)を用いた傾聴面談の準備とプロセスを解説しましょう。



 この傾聴面談は、仕事の期初等(年度始め等)に設定するとよいでしょう。面談では、まず部下の仕事への思いやキャリア志向、また強み、弱みなどへの理解に努めます。その上で、仕事の目的や意義を共有しながら、本人に任せる役割・仕事を決めていくための手がかりを掴み、互いに確認するものです。面談は部下1人1時間程度で、上司は「メンバー育成計画シート」を手元に置き、肯定的な姿勢で傾聴していきます。以下、手順に沿って説明します。


(1)部下のキャリアを概観した上で、会社や仕事への思いを聴く

 シートの左側一列は、部下のキャリアヒストリーを整理する部分です。部下との面談に先立ち、分かる範囲で本人の経歴や現在の担当業務、将来のキャリアの希望などを記入しておきます。面談では、それらを確認・補強する形で本人の話を聴き取ります。経歴や担当業務で本人の将来に役立つ部分やさらに伸ばしたい部分などは、詳しく聴くとよいでしょう。本人の将来のキャリアへの希望も改めて確認していきます。

 シート右側の上段では、部下が会社や仕事に抱いている満足感や充実感、また一方で不満や悩みに思うことを聴き取ります。ブラスの内容や感想は話しやすく、マイナスの意見は打ち明けにくいものです。上司は、できるだけ率直な思いを語れる雰囲気づくりに留意しましょう。また、また同様に部下の仕事や役割についての本人の思いも、プラス・マイナス両面で聴き取ります。満足と不満のそれぞれの要因を、無理のない範囲で詳しく正確に聴き取ることが、本人の理解と今後の育成に役立ちます。


(2)部下の「強み」を認め、「弱み」をフォローする

 以上を踏まえ、シートの右側・中段の本人の「強み」と「弱み」について話題を進めます。上司が感じる内容は予め記入しておきます。

 部下は、いきなり「あなたの強みは? 弱みは?」と尋ねられても答えにくいものです。そこで、まず本人の「持ち味」に着目してみましょう。本人が感じているこれまでに成果が上がったと思う仕事や、やりがいを感じた仕事は何か。一方、苦手なことは何かといった話題から始めて、話を深めます。本人の持ち味への光の当て方によって、強みと弱みが浮かび上がってくるものです。

 ここでは第一に、部下本人が自覚している強みと弱みは何か、自己開示を促します。そのうえで、上司の評価も伝えながら、双方の認識をすり合わせていきます。本人が気づいていない強みはしっかりと伝え、励まします。また弱みの指摘は本人を萎縮させがちですが、強みと表裏一体なことも多いので、個性として前向きに捉えさせたうえで、より成長するための補強策を話し合うのが効果的でしょう。部下の強みはさらに伸ばし、弱みは本人の努力と上司・同僚の協力で補強していくのが、「支援型マネジメント」のめざすところです。

 面談での対話から、すでに部下への動機づけがスタートしています。部下の思いや自己認識の傾聴に努めながらも、よきアドバイスや励ましによって上司と部下の信頼関係の基礎をつくっていきましょう。


(3)将来への希望と期待をすり合わせる

 シート右下の最終項目は、上司の部下に対する「将来への期待」です。以上の傾聴と対話を通して、部下の今後の仕事への希望や自己啓発の課題などが明らかになってきました。そこで、部下の意向を十分に踏まえながらも、上司としての期待を整理し、本人にしっかりと伝えます。今後3〜5年の将来を見据え、部下にどのように成長し、活躍をしてほしいか。そのために、当面どのような役割や仕事を任せ、期待を持つのか。その実現に向けて、上司がいかにフォローしていくか。日常の報連相や、定期的な打ち合わせや面談による支援、部下の自己啓発への応援方法なども含めて、上司の関り方も明らかにすることが大切です。

 上司と部下の対話では、全てが完全に一致し、同意できる内容ばかりではないでしょう。この認識のズレも、上司はきちんと自覚することが必要です。その上で、そのズレをいかに解消していくか。部下に粘り強く働きかける事柄や、互いに調整と努力をし合う点は何か。また上司自身が反省し変わらなければならない点もあるでしょう。部下の優れた点からは謙虚に学び、共に自分も育つ「共育」の視点が大事です。傾聴面談は、上司自身の内省と成長の場であると心得ましょう。


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 上司である皆さんが、日々職場で実感しているマネジメントの課題は何ですか? 「ご意見・ご感想」送信フォームから、本連載へのご感想と併せてお寄せください。今後の企画・執筆の参考にさせていただきます。

第3回

【STEP①】「相互理解」を深める《その2》
上司力のベースに「愛他主義」を置く

【紙上講座(新聞掲載)】

心理的安全性を醸成しよう

 部下との信頼関係や、活躍できる職場づくりで留意したいのが、「心理的安全性」です。部下が自分の力をいかんなく発揮して働くためには、職場が安心・安全な場所であることが重要です。職場はいつでも自分を迎え入れてくれる「ホーム」であり、「本音や弱みを見せても非難されず、上司やメンバーに受け入れられている」と感じられることが大切です。

 部下が上司に忌憚のない質問や意見、率直な悩みの相談ができるのも、部下が上司との関係に安心・安全を感じられていることが大前提です。そのためには、上司が率先して自己開示し合える場を作り、相互に自分の気持ちや考えを伝え合うステップを踏むことで、部下に安心感を与えることです。ただし、前回触れたように、部下のプライバシーへの過渡な踏み込みは控え、自らオープンに語りつつ、部下の自然な自己開示に耳を傾けましょう。

 心理的安全性の醸成は、相互理解のための面談を数回行ったからといって、すぐにはできません。上司が意識的に、日々の仕事や対話を通して部下と喜怒哀楽を共にする機会を重ね、お互いの理解が深まり信頼関係が作られる過程で、徐々に進むものです。


「話しすぎ」に注意し、「話を待つ」姿勢で

 上司は、部下との距離を縮めようとするがあまりの「話しすぎ」に、注意が必要です。仕事熱心で優秀な上司ほど、部下との面談や会話の際に、「しっかりと話を深めよう」「できるだけわかり合おう」と考えがちです。しかし、前のめりで対話を始めると、上司が一方的に部下に話し続ける「演説状態」になってしまう傾向があります。部下への傾聴のための面談であったはずが、「部下が黙り込むので、つい焦って自分ばかりが話してしまった」と語る上司は多いものです。

 上司も、まだ十分に心情が通い合わない部下との対話で沈黙が続くと不安になり、沈黙を解消しようと焦り、自分ばかりが語ってしまうのです。しかしこれは逆効果で、部下にすれば上司への遠慮からさらに話を切り出しにくくなります。

 そこで、「沈黙もコミュニケーション」と捉えることです。部下が黙り込んでも焦らず、「考えを整理してから、ゆっくり話してくれればいいよ」と伝え、部下が話すことを待ちましょう。相手を待つことのできる包容力や、相手のペースに合わせられる余裕が、信頼関係づくりには欠かせません。ただでさえ上司は職場で優越的な立場にありますから、部下から本音を引き出すのはとても難しいことと心得ましょう。


「笑顔のトレーニング」から始める

 また、部下との会話中に気をつけたいのは、上司の表情、特に「笑顔」です。そして、上司は決して「仏頂面」で話さないことです。会社側の評価者でもある上司は、部下にとって怖い存在と思われがちです。上司本人は普通な顔のつもりでも、無表情なだけで「機嫌が悪いのでは…」「話しづらいな…」と部下は感じてしまうのです。

 多様な人の育成や活躍に優れ、国のダイバーシティ経営企業にも選ばれた日本レーザーの近藤宣之会長は、社員たちの心を開くために、「笑顔は性格ではなく能力」と自分に言い聞かせ、鏡を見て口角を上げて、ニコニコしながら話すようにトレーニングをしているとのこと。私が初対面で対談した際も、その笑顔に一気に打ち解けた気持ちになれました。また、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会コンサルタントのニック・バーリーは、プレゼンの途中のどのタイミングで笑顔にすれば有効か、緻密に計画したとのことです。部下との信頼関係づくりには、「笑顔のトレーニング」から始めることもよいでしょう。


上司力のベースとなる「愛他主義」

 ここまで、部下との相互理解のための面談や話し方を例示してきましたが、テクニックだけでは信頼は育めません。その大前提として、上司としての「心」を整えるべきです。それを私は「愛他主義」という造語で定義しています。

 「利己主義」に対して「利他主義」という言葉がありますが、利するのが自分でも他人でも、「利」を考える以上、そこには「損得勘定」が働きます。しかし、私は人と人が相互理解を深め、深い信頼関係を構築するには、「損得抜きで、愛情を持って」相手に接することが不可欠だと考えています。上司として部下の仕事の成果を喜ぶこと以上に、部下自身の働きがいや成長を本気で願い、思いやることが重要なのです。



 私が実際に聞いた、ある管理職の体験談を紹介します。彼は、部下時代、優秀な営業マンで、高い業績を評価され課長へとスピード昇進を果たしました。そこで高い目標を掲げ、自分が実行してきた高速回転の営業活動を部下に課し、「この通りやれば、必ず成果が上がる。頑張ろう!」と発破をかけます。しかし、一部の部下から悲鳴が上がり、それが次第に広がり、メンタルを患う者や退職者まで出始めました。上司や人事も看過できない状況です。プレイヤーとして高い成績を誇った彼は、管理職になり初めて大きな壁にぶつかったのです。


上司が変われば、部下も変わる

 悩んだ彼は、人材育成で定評のある先輩管理職に相談しました。そこで、先輩から投げかけられた問いは、「目の前の苦しむ部下がもしも君の息子や娘なら、『それでも頑張れ』と説得するか?」でした。彼はハッとして、「自分の子どもなら…『そんな心身を壊すほどしんどい仕事なら辞めなさい』と言うと思います」と答えました。部下を道具のように扱い、人として慮ることのなかった自分を反省したといいます。

 それからの彼は、部下への対応を改め、目標達成が難しいのはなぜか、どうすればよいと考えるか、部下の率直な意見を聞き、一人ひとり相手の立場になって親身に考えるようになりました。その結果、部下の様子は徐々に変わり、不調者や退職者も出なくなりました。そして、部下からの自発的な工夫や提案が上がり始め、自律的な営業活動でチームの成績も上向いていったのです。

 この事例は、上司が変わることで、部下も職場も大きく変化することを示しています。すなわち、部下に自分の子どもや家族と変わらぬ愛情を持って対すれば、自ずと損得勘定を超えた関係が生まれ、信頼を結び直すことができるのです。上司は「愛他主義」をベースに置き、部下への接し方を内省し続けることが大事なのです。

【 解説 】

違いを認めることから始まる
「コミュニケーション・サイクル理論」

 連載第3回では、支援型マネジメントを進めるための【STEP①】『「相互理解」を深める』の《その2》として、部下との対話で信頼関係を深めるための留意点、そしてその基礎となる「愛他主義」の大切さを述べました。

 それにしても、職場のダイバーシティ(メンバーの多様化)が進むなかで、立場や世代や価値観が異なる部下を理解するのは、決して容易なことではありません。そこで、以下では、私たちFeelWorksが「自分と違う相手を知る」ための理論と方法として開発し、提唱している「コミュニケーション・サイクル理論(以下、CC理論)」を紹介しましょう。

「コミュニケーション・サイクル理論」(CC理論)とは

 今や、40~50代以上の上司・経営者世代が入社し、働いてきた時代とは働く環境が一変しています。働く人たちの意識も大きく変わり、企業・組織のあり方も大きな変革を迫られています。こうしたなかで、上司と部下とのコミュニケーションのすれ違いが頻発していますが、その原因は、上司側が部下の価値観を十分理解しきれず、結果として自分の考え方を一方的に押し付けてしまう固定観念、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)による場合が多いのです。

こうしたなかで、CC理論は人が自分の固定観念や偏見から脱し、コミュケーションを改善するための有効な手法であり、具体的には次の4つのステップから成るものです。(図「コミュニケーション・サイクル理論」参照)。


Step1 違いを認める(相手の違いを前向きに捉える)

Step2 価値観を知る(相手の違いを生む考え方を理解する)

Step3 あり方を定める(自分の考え方・姿勢を改める)

Step4 やり方を変える(自分の行動・働きかけを変える)


 上司と部下が信頼関係を築くためには、上司がこのフレームを活用して部下を深く理解し、自らのコミュニケーションを改善していくことが効果的です。

 以下では、このステップを理解いただくために、「仕事と育児を両立する女性社員の育成支援への取り組み」を例にとって、説明してみましょう。

■「仕事の負荷を下げてほしい…」

 次のような場面を想像してください。あなたの部下である産休明けの女性社員(30歳)から、次のような申し出がありました。

 「育児が大変なので短時間勤務にして頂き、仕事の負荷も下げて頂きたいのですが…。」

 ここで、クイズです。上司であるあなたは、この女性社員に対して次のどちらの対応を取りますか。まず直観で答えを選んでください。

A-① すぐに短時間勤務を認め、できるだけ仕事の負荷を下げよう。在宅勤務も推奨しよう。

A-② 本人と家庭の状況をよく聴き、キャリアアップできる役割と働き方を一緒に考えよう。

 それでは、以下、CC理論に沿ってクイズの答えを考えていきましょう。

■Step1 違いを認める

 40~50代の男性管理職で仕事一筋に働いてきた既婚上司の場合、自分が一家の大黒柱であり、妻は専業主婦かパート職などの場合が多いものです。育児や家事を担った経験は少なく、共働き世帯の大変さも実感できません。そのため「社員として給料を得ている以上、家庭の事情云々より仕事で責任を果たすのが第一」と、部下の申し出に内心は違和感を覚えつつ、「結局、女性は仕事より育児や家庭が優先」と考え直します。そして、職場の中核人材としての活躍はあきらめ、A―①のように本人希望どおり、できるだけ育児に専念させようと決めるのです。

 しかし、本当に「女性は仕事より育児や家庭が優先」なのでしょうか。そう捉える背景には、「男性は仕事、女性は家庭」という、上司の性別役割分担意識からの思い込みがあるかもしれません。意欲的な女性には、育児の負荷は重いものの、責任ある役割を担いたい、キャリアを断線させたくないと考える人も少なくありません。つまり、仕事も育児も共に頑張りたい、でも自信が持てず、苦渋の判断で短時間勤務や仕事の負荷軽減を申し出ている可能性もあるのです。加えて会社が整備する人事制度なので、当然使うべきだという権利意識も芽生えているかもしれません。上司は、こうした女性部下の自分との立場や環境の違い、そして仕事と育児の両立に不安や悩みで揺れ動く現状を察し、理解しようとすることが大事なのです。

■Step2 価値観を知る

 仕事と育児の両立の大変さのなかで、キャリア意識が高い女性ほど、現在の日本企業の働き方自体に不安や疑問を感じている場合が多いのです。最近は働き方改革で過重労働こそ是正されつつあるものの、現場ではまだまだ急な会議やトラブル対応が生じ、残業や出張も発生します。また中堅やリーダーになれば、後輩やチームの支援にまつわる突発事案も生じます。一方の育児でも、子どもの急な病気や看護などで、職場を遅刻早退や休まざるを得ない状況が頻発します。そこで、育児を全うできるかの不安と、職場や同僚に迷惑をかけられない責任意識から、重要な仕事を諦め、勤務時間短縮や仕事の軽減を申し出ている可能性があるのです。

 つまり、ダウンシフトへの希望は、育児や家事を担うためのギリギリの選択で、実は仕事との両方で頑張りたいものの、今の働き方では自信がもてず、不安や遠慮を抱えているかもしれない。むしろ仕事への意欲や責任感の裏返しではないかと、本人に寄り添って考えてみるのです。上司は、女性社員の言動が、単に育児優先の価値観からではなく、仕事との両立の願いを持ちつつ悩む心情からであることを、しっかり理解する必要があります。

■Step3 あり方を定める

 したがって、上司は女性部下からの表面的な申し出をすぐ鵜呑みにしてはいけませんが、とは言え、従来通りの仕事を従来通りの働き方で続けさせることにも無理があります。子育て中の短時間勤務社員のプライベートな時間は、想像を超えた忙しさです。同僚に気兼ねしつつ早めに職場を抜けて保育園に駆け付け、その日の子どもの状況や注意事項を引継ぎます。帰宅後は、子どもの食事、風呂、翌日の登園準備、寝かしつけ、残った家事の片付けなど、重労働が待ち受けます。翌朝も起床から子供の世話と保育園への送り出し、そして出社と、目まぐるしいものです。パートナーの夫が率先して分担すればまだしも、まだまだ片寄りも大きいものです。

 そこで、上司は、「長時間で責任の重い仕事」か「短時間で責任の軽い仕事か」という二者択一の発想を捨て、「短時間で責任の重い仕事」という第三の選択肢を考える必要があります。どうすれば短時間勤務や柔軟な働き方を通して本人がキャリアアップをめざし、会社の中核社員として貢献できるか、本人と相談しながら共に考えることが大切です。

 以上のことから、クイズの妥当解はA-②です。上司は、部下と一緒に本人の仕事の棚卸しと見直しを行い、育児や家庭の状況等もよく聴き、本人のキャリア希望も確認しながら、前向きな役割と働き方を共に考えるのです。

■Step4 やり方を変える

 具体的には、対話を通じて、部下の仕事を、止めてもいいもの、改善すべきもの、他者と分担できるもの、本人がさらに深め伸ばしたいもの、などに仕分けていきます。そして短時間勤務や在宅勤務でも十分に本人の力を発揮できチームや会社に貢献できる仕事を精選します。

 ここでのポイントは、短時間勤務や在宅勤務でも、仕事をレベルダウンさせないことです。例えば、従来の実績を踏まえて、これを機にリーダー役を任せることも考えられます。これまで、リーダーは常に会社で、リアルタイムで後輩を指導すべきと考えがちでしたが、リモートワークの普及でこの常識も一変しました。まだ発展途上で課題はあるものの、遠隔での効果的なマネジメントも可能になりつつあるのです。

 そもそも、上司になることは、自分で手を動かすプレイヤー業務から人を動かすマネジメント業務へと移行しますから、遠隔でも十分可能なはずです。要所要所の1on1ミーティングで仕事の目的共有や相談をしっかり行えれば、日常の意思疎通や会議はメールやチャット、ZOOMやTEAMS等で直接顔を合わせずともこなせます。こうした新しいチーム運営に精通すれば、仕事と育児の両立推進のみならず、リモートワークを取り入れたよき働き方改革のモデル例にもなるでしょう。


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