研修、講演のご案内| 連載『「⼈が育つ現場」考』バックナンバー| 紙上講座 現場リーダーのための「上司力」養成講座(全12回)

研修サービスのご案内

㈱通信⽂化新報では「通信⽂化新報」を媒体として、郵便局を中⼼とした皆さまに様々な情報を発信しております。

この情報発信の媒体に加え、皆さまの組織、個⼈の研鑽のお役⽴ちを⽬的として、前川孝雄⽒が代表を務める㈱FeelWorksと提携し、研修や講演を提供する研修事業を⾏っております。紙⾯掲載の情報と合わせてご活⽤いただければ幸いです。

研修サービスのご案内

新型コロナウイルス感染拡⼤の影響により、⼀つの会場に多くの参加者を集める講演や研修の開催は難しい状況です。そこでぜひ導⼊いただきたいのが、FeelWorksのオンライン講演・研修です。テレビ・Web会議ツールの多彩な機能を効果的に活⽤し実施します。講演はどのプログラムでも実施が可能。研修ではグループワークも集合研修・講演と遜⾊ないレベルでご提供します。

対象・テーマ別講演シリーズ
【トップの上司⼒講演】

部⾨・事業部などのトップとして、多様な部下⼀⼈ひとりの能⼒をフルに発揮させ、組織成果を最⼤化するための「トップのあり⽅(⽬指すべきトップ像)」をお話しする講演です。

現代の会社組織は、その多くが短期的な業績向上に追われ、⻑期的な視点で⼈と組織の成⻑を⽀援する余裕を失っています。

しかし、⼈材育成や組織開発なくして、ビジネスの持続的な発展などありえません。

そこで本講演では、⼈材育成の⽬的・意義、組織のトップに求められる⼼構えや姿勢などについて、講師の実体験を交えながら紹介していきます。

<プログラム例/2時間程度>

01 業績向上と人材育成・組織開発の狭間で

02 管理職が抱きがちな部下に対するイメージ

03 これからの組織はどう変わるべきか

04 組織成果を最大化するトップの上司力

05 上司力実践の先にある醍醐味

【現場の上司⼒講演】

多様な部下を育て、活かすための「上司のあり⽅(⽬指すべき上司像)」をお話しする講演です。

現代の管理職はその9割がプレイングマネジャーであり、短期的な業績の維持・向上と部下育成の狭間で⽇々忙殺されています。

しかし、そんな苦境を打開する鍵こそ、他でもない部下育成であり、部下育成なくしては、組織の持続的な成⻑もありえません。

そこで本講演では、部下育成の⽬的・意義、上司に求められる⼼構えや姿勢などについて、講師の実体験を交えながらご紹介していきます。

<プログラム例/2時間程度>

01 業績向上とマネジメントの狭間で奮闘する上司たち

02 日本型ダイバーシティ時代の到来

03 管理職が抱きがちな部下に対するイメージ

04 一人ひとりを活かす現場の上司力

05 現場で明日から試せる上司の仕掛け

【ダイバーシティマネジメント講演】

職場では、役職や雇用形態、年齢、性別、障害の有無、国籍やルーツ、子育てや介護との両立など、立場や環境や価値観の異なる様々なメンバーが共に働いています。

上司には、これらの多様な部下を束ね、互いに援け合い、一人ひとりが働きがいを持てる職場環境づくりと、メンバーを効果的に支援・育成する役割が求められます。

本講演では、ダイバーシティマネジメント(多様性のマネジメント)の⽬的・意義、上司に求められる⼼構えや姿勢などをお伝えします。

<プログラム例/2時間程度>

01 ダイバーシティマネジメントとは何か?

02 多様な人材が活躍できる組織とは

03 多様な部下を育て活かす心構え

04 指示・管理から共感・支援へ

05 まとめ・質疑応答

2019年6月・日本郵便㈱東京支社開催の局長マネジメント研修

【プロフェッショナルマインド講演】

中堅社員に求められる「⾃律的な働き⽅」についてお話しする講演です。

若⼿から中堅へと年次が上がり、周囲の期待は「確実に仕事を覚え、こなす」ことから「⾃ら仕事・役割を創り出し、周囲を巻き込み、成果を上げること」へと⼤きく変化していきます。

つまり、真のプロフェッショナルへの脱⽪を強く求められるようになるのです。

本講演ではその実践のために⽋かせない⼼構えや仕事に取り組む姿勢について、具体的な事例を交えながらご紹介していきます。

<プログラム例/2時間程度>

01 中堅社員たちの悩みと迷い

02 次のステップに向けて大切にしたい働き方

03 上司を読み解く5つの思考

04 ケースで学ぶ「壁を越えてきた先輩たちのストーリー」

05 プロフェッショナルとは?

【50代からの働き⽅講演】

50代前後の会社員にとって、⻑時間労働や転勤などもいとわず働いてきたハードな会社員⽣活も第4コーナー。

平成の30年間、低迷し続けてきた経済環境の下、期待していた出世や給与も得られていないと感じる⼈は少なくありません。

役職定年や定年退職が⾒えてきたと思いきや、「⼈⽣100年時代」「定年延⻑」などの⾵潮が⾼まり、ゴールが先延ばしになったとモチベーションが下がる⼈も増えています。

確かに、得られなかったものや失ったものは多々ありますが、実は⻑年組織で働いてきたからこそ得られたものもあります。

⼈⽣100年ということは、やりたいことを⾒つけ挑戦する時間が⽣まれたとも考えられます。

艱難⾟苦を我慢してきた⼈⽣前半戦の20〜30年から解放され、働きがいを育み、これからの充実した20〜30年の⼈⽣後半戦を作っていくために何が必要なのか。

会社員のうちにやっておくべきことは何か。

50代からの働き⽅について、その⼼構えと準備のポイントをお話します。

<プログラム例/2時間程度>

① 40~50代世代が働いてきた平成の30年

② 会社員人生で得たものは何? 暗いニュースに惑わされるな

③ そもそも、なぜ働いているのか?

④ プライドの物差しを給料・職位から働きがいに変えよう

⑤ しがらみから自分を解放! 50歳からの20年の働き方

⑥ 会社員生活でやれることはまだまだある

<プログラム例/2時間程度>

[Q1] 自分の人生があと1年だとしたら、何をやりたいですか?

[Q2] なぜ、そのやりたいことに挑戦しないのですか?

[Q3] やりたいことができない本当の理由は何ですか?

[Q4] 名刺がなくても付き合える社外の知人は何人いますか?

[Q5] 会社の外でも通用する、自分の強みは何ですか?

[Q6] その強みを磨き、不動にするためには何が必要ですか?

[Q7] 会社員のうちに何から始めますか?

上司⼒研修シリーズ
◆中間管理職向けリーダーシップ研修
部下を育て、活かす「現場の上司力」

上司が部下との信頼関係を築くうえで必要な心構えや姿勢を定めることに注力。グループワークを通じて受講者同士が意見を交わし、内省を深め、「上司のあり方(目指すべき上司像)」を明確に言語化できるまでブラッシュアップしていきます。

<プログラム例/1日版・現場の上司力研修>

01【講義】業績向上とマネジメントの狭間で奮闘する上司たち

02【ワーク】現場のマネジメント課題を共有する

03【講 義】日本型ダイバーシティ時代の到来

04【講 義】管理職が抱きがちな部下に対するイメージ

05【ワーク】マネジメント課題の原因・背景を深堀する

06【ワーク】こんなときどうする? 上司力クイズ

07【講 義】一人ひとりを活かす現場の上司力

08【ワーク】上司としての「あり方」を定める

09【講 義】現場で明日から試せる上司の仕掛け

10【ワーク】上司としての「やり方」を決める

11【ワーク】上司力決意表明シートを作る

12 まとめ・質疑応答

【オンライン版】部下を育て、活かす「現場の上司力」

テレビ・Web会議ツールの多彩な機能を効果的に活用し実施します。講義はもちろん、グループワークも集合研修と遜色ないレベルでご提供します。

[所要時間]

3~7時間程度

[受講対象]

・管理職経験者全般

・現場従業員を指揮下に置く課長相当の方 

・組織開発・部下育成の課題を解決したい方

[使用ツール]

ZOOM[プログラム]

01. 講義/業績向上とマネジメントの狭間で奮闘する上司

02. グループワーク/現場のマネジメント課題を共有する

03. 講義/メンバーの価値観を読み解く鍵

04. グループワーク/課題の原因・背景を深掘りする

05. 講義/一人ひとりを活かす現場の上司力

06. 個人ワーク/上司としての「あり方」を定める

07. 講義/現場で明日から試せる上司の仕掛け

08. グループワーク/上司としての「やり方」を決める

09. 個人ワーク/上司力決意表明シートを作る

◆上級管理職向けリーダーシップ研修
組織成果を最大化する「トップの上司力」

組織ラインを信頼関係で結ぶうえで求められる心構えや姿勢を定めることに注力。グループワークを通じて受講者同士が意見を交わし、内省を深め、「トップのあり方(目指すべきトップ像)」を明確に言語化できるまでブラッシュアップします。

<プログラム例/1日版・トップの上司力研修>

01【講義】業績向上と人材育成・組織開発の狭間で奮闘するトップたち

02【ワーク】現状のマネジメント課題を共有する

03【講 義】管理職が抱きがちな部下に対するイメージ

04【ワーク】課題の原因・背景を深堀する

05【講 義】これからの組織はどう変わるべきか

06【講 義】組織成果を最大化するトップの上司力

07【ワーク】トップとしての「あり方」を定める

08【講 義】マネジメントからリーダーシップの時代へ

09【ワーク】トップとしての「やり方」を決める

10【講 義】上司力実践の先にある醍醐味

11【ワーク】上司力決意表明シートを作る

12 まとめ・質疑応答

◆上司力鍛錬ゼミ(全3回)

第1回 メンバーを強く動機づけする

●プログラム例 (7時間程度)

01 【講 義】トップのビジョン創りに必要な未来志向

02 【ワーク】トップとしての未来志向を養う~自部門ビジネスの未来を予測する~

03 【講 義】部下のやる気を引き出す 「チームビジョン」 を考える

04 【ワーク】3年後の組織ビジョンを言語化する

05 【ワーク】組織ビジョン作成と浸透の準備~傾聴とファシリテーションの活用~

06 まとめ・質疑応答/次回までの課題説明

第2回 一人ひとりの強みを活かす

●プログラム例 (7時間程度)

01 【ワーク】 課題の進捗共有と相互アドバイス

02 【講 義】 強みとは何か。なぜ強みを活かすべきなのか

03 【ワーク】 コアメンバーの強み自慢(キャッチフレーズ付け)

04 【ワーク】 一人ひとりの強みを活かす組織をデザイン

❶目的の明確化❷お役立ちフローの俯瞰❸強みを活かす人材配置・定義❹コミュニケーションの流れ設計

05  まとめ・質疑応答/次回までの課題説明

第3回 自律的な職場風土を醸成する現場の応援設計

●プログラム例 (7時間程度)

01 【ワーク】 課題の進捗共有と相互アドバイス

02 【ワーク】 組織ビジョンスピーチのロールプレイング

03 【講 義】 現場を応援する仕掛けとは何か

04 【ワーク】 新たに考えた仕掛けを共有する

05 【ワーク】 実施する仕掛けを決める

06 まとめ・質疑応答

eラーニング・通信講座など
◆eラーニング「パワハラ予防講座」

2020年6月(※)より、「パワハラ防止法」が施行され、多くの企業にて様々なパワハラ対策が取られています。しかし、厚生労働省によると、パワハラの相談件数は、年々増加の一途をたどるばかり。なぜ、パワハラは減らないのでしょうか? FeelWorksでは、全国の課長・部長1,000名を対象とした「職場のハラスメントに関するアンケート調査」を実施し、その結果からパワハラが起こる背景や要因について考察。長年上司・部下のコミュニケーション課題を追究してきた知見を活かし、上司・部下両者に向けた「パワハラ予防講座」を制作しました。ぜひ、ご活用ください。

※大企業では2020年6月より、中小企業では2022年4月より施行。

ダイジェスト紹介(YouTube)
◆eラーニング「新入社員のはたらく心得」

準備中

◆通信講座

準備中

研修、講演のお問合せ

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連載『「⼈が育つ現場」考』バックナンバー

株式会社FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師 前川孝雄

人気連載コラム『「人が育つ現場」考』 待望の書籍化

 通信文化新報に2019年7月から連載されている前川孝雄氏の『「人が育つ現場」考』の珠玉のコラムを再編集した書籍「人を活かす経営の新常識」が出版されました。

■出版社 : ‎ 株式会社FeelWorks

■発行日‏ : ‎ 2021年9月15日

■オンデマンド (ペーパーバック) ‏ : ‎ 192ページ

■寸法 ‏ : ‎ 14.8 x 1.22 x 21 cm

■専用表紙カバー(郵政関係者限定)

■定価2,700円(税込み価格2,970円)

 昨今、会社のあり方や働き方が様変わりしています。

 終身雇用制度や年功序列型賃金制度は事実上崩壊し、ダイバーシティの推進、ハラスメント意識の高まり、加速度的に進むデジタル化、人生100年時代の到来など、いま、会社を取り巻く環境は劇的に変化しています。そこにコロナ禍も拍車をかけて、人々の働き方や生活様式、意識・価値観も変化しています。


■ニューノーマル時代の「経営と働き方」改革に着手せよ

 本書は、これまで培ってきた日本企業の強さや長所を活かしつつ、ニューノーマル時代の「人を活かす経営」実現に向けた主要テーマについて深く考察し、経営やマネジメントに活かすヒントが凝縮された1冊です。

 一人ひとりが働く現場を起点に、上司(経営者や管理職)がその役割を発揮して「人を大切に育て活かす企業・職場づくり」をいかに進めるか。8つのテーマと50の講話で解説します。

 若者の雇用・育成とリテンションマネジメント、真の女性活躍への道、シニア世代の自律的な働き方の促進、パワハラの積極的予防法、リモートワーク時代の戦略的マネジメントなど。

 経営者・管理職が、これまでの「常識」(固定観念)を捨て、自己変革を遂げる視点と方策を具体的に提示しつつ、山積する複雑な課題を解決に導きます。

【目次】

第1章 “働きがい”こそ現場改革の原動力

第2章 若手世代をいかに育てるか

第3章 真の女性活躍はこれから

第4章 ミドル・シニアこそキャリア自律を

第5章 コロナ禍に打ち克つ経営とは

第6章 リモートワークで問われるマネジメント改革

第7章 ハラスメント予防は職場ぐるみで

第8章 これからの人を活かす会社の条件

書籍のお求めについて(日本郵政グループ関係者限定)

 下記より弊社へご連絡いただき本書をお求めの場合は定価の10%割引価格(税込み 2,673円)でお送りいたします(送料無料)。

 下記フォームに必要事項を記入の上、送信してください。

 書籍料金については振込用紙を同封いたしますので、お近くの郵便局にてお支払い願います(振込手数料無料)。

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紙上講座 現場リーダーのための「上司力」養成講座(全12回)

株式会社FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師 前川孝雄

本物の「上司力」を探求する場に 〜紙上講座の連載開始にあたって〜

 この度、日本郵政グループの現場リーダー向けに紙上講座を連載できることは、とても感慨深く光栄です。私が1990年代に前職リクルートで様々な就・転職・キャリア支援メディア編集長時代から探究を続け、最初に独自の「上司力」を打ち出したのは、2006年の『上司力トレーニング』(ダイヤモンド社)です。その後「人を大切に育て活かす社会づくりへの貢献」を志して、2008年に人材育成支援の株式会社FeelWorksを設立。以来、日本郵政グループをはじめとした大企業を中心に400社以上で「上司力研修」「上司力鍛錬ゼミ」を開講し、管理職や経営者の育成・支援に打ち込んできました。書籍出版も30冊以上となり、10月には最新刊『本物の「上司力」』(大和出版)も出版します。

 日本郵政グループとのご縁では、2012年から日本郵便東京支社で、主に基幹局の局長や部長を対象に「上司力」向上の研修を開講し、毎年、多くの受講者の皆さんと切磋琢磨してきました。それだけに郵政現場への親近感は強く、あらためてこの紙上講座でご一緒できることは嬉しい限りです。

 今後1年間、月1回の連載を通して、私が四半世紀かけて探究してきた本物の「上司力」を皆さんに学んで頂きます。(2020年9月)

第12回

上司の役割は、部下の働きがいと活躍・成長支援で果たせる

【紙上講座(新聞掲載)】

 本連載では、上司が身につけたい「支援型マネジメントの5つのステップ」を前号の第11回までで順に解説してきました。最終回の今回は、まとめとして現場リーダーが「上司力」を発揮するための心得を押さえておきましょう。


まずは「信じて任せる」ことから

 本連載の第1回で、クイック・ウィン・パラドックスについてふれました。

 職責意識の高い上司ほど、①隘路(あいろ)に入り込み、周囲が見えなくなり、自分で全てを解決しようとする、②批判を否定的に受け止め、部下の異なる意見を聞き入れられなくなる、③威圧的になり、上司の権限をかざして一方的に命令・叱責する、④拙速に結論を出そうと、部下の状況や意見を顧みず決めつけて判断する、⑤マイクロ・マネジメントに走り、部下に事細かに指示し動かそうとする…などの行動を取りがちです。

 しかし、これでは部下の心は離れ、やる気を失い、マネジメントは空回りし始めます。すなわち、早い成果を出そうとの焦りが、かえって成果を遠のかせるジレンマ―クイック・ウィン・パラドックスの罠に陥るのです。

 自分が優秀なプレイヤーだった上司ほど、この傾向になりがちです。仕事の当事者は部下本人であり、上司はその部下を支援するのが本来の仕事と心得ることです。自分のやり方を押し付けたり、指示や命令のみで動かそうとしたり、部下の一挙手一投足を管理するのではなく、「いかに部下を信じ、任せるか」が問われるのです。

 部下は、上司とは違う人間ですから、成果を出すまでのプロセスも、かける時間も違います。上司の想像以上に時間を要し、予想もしない行動もあるでしょう。そうした違いを許容し、部下一人ひとりの意見に耳を傾け、各自の持ち味を活かし、信じて任せることで、チームで成果を上げることにつながるのです。


「任せる」とは、部下に責任と主体性を付与すること

 私たちが実施する「上司力研修」で、この「部下の違いを許容し、一人ひとりの持ち味を活かし、信じて任せる」というお話しをすると、「部下の自分勝手を許していいのか」「そんなに甘やかしていいのか」との意見が一部に見られます。

 しかし、「信じて任せる」ことは、部下にとって決して甘い話ではありません。「自分の持ち味が認められ、信じて任せてもらう」ことは、「自分が責任を負う」ことと同義。上司に責任転嫁することなく、自ら最大限、達成に努める姿勢が求められるからです。上司にも、余計な手出しをしない覚悟が求められます。

 試合でボールを持っているのは、あくまでも部下自身。そのボールをどう運ぶかも、部下次第です。上司の仕事は、部下が才能を開花できる土俵をつくり、部下同士の協力を促し、応援することです。

 こうして上司が意識を改め、行動を変えることで、部下はいきいきと働き始め、チームも徐々に自走するようになっていきます。自然にチームのパフォーマンスも上がり、一人では決して達成できない大きな成果をチームで上げることも可能になるのです。


「上司は役割」と心得る

 「管理職」という表現どおり、上司とは「人の上に立ち下の者を管理する者」ととらえがちです。皆さんも「上司たるもの、人の上に立つ以上は…」「上司は一段偉く、立派な立場にいなくては…」と、つい肩に力が入ってはいませんか。

 しかし、「部下を信じて任せる」支援型マネジメントを行ううえでは、上司というのはあくまで「役割」だと心得ることが第一です。

 皆さんのなかには、PTAの会長やマンション管理組合の理事長などの経験がある方もいるでしょう。PTAやマンション管理組合では、メンバーの立場は対等で、役員も持ち回りです。会長や理事長だからといって、特別に偉く立派なわけではありません。仕事振りや人柄が評価されることはあっても、「私が会長だから言うことを聞け!」「理事長の私の指示には黙って従って!」などの態度は、通用しません。

 また、PTAやマンション管理組合は、多様な人の集まりです。PTAの保護者には共働きの人もいれば専業主婦(夫)もいます。働く人も、職業や勤務形態はまちまちです。マンション管理組合ともなれば、高齢者から若者まで年齢層も幅広いでしょう。互いの立場や価値観も多様です。そこでメンバーをまとめあげ、組織の仕事を遂行するには、指示・命令で人を動かすことはできません。メンバー一人ひとりと対話し、相手の考えを聞き、合意をとりつけながら、各自の希望や持ち味に応じた仕事を任せていくしかありません。

 私は、時代変化によって、職場における上司の役割は、このPTA会長やマンション管理組合の理事長と同じになってきていると考えています。


対等な関係のなかで相手を活かす

 日本企業を取り巻く環境は、昭和の戦後高度成長期から平成を経て、大きく変化しました。

 若手社員は、「終身雇用・年功序列」とは異なる仕組みと価値観のなかで働いています。ワーク・ライフ・バランスが重視され、仕事とプライベートの調和を重んじる人が増えました。社員が子育てや介護をしながら働き、会社にはその環境整備が求められるようになりました。また非正規社員の増加で、職場の雇用形態も多様化しました。副業解禁の流れで、複数の仕事を持つスタッフも増えるでしょう。雇用延長が進み、年上部下の存在も普通になるでしょう。

 かつての日本企業が、「男性=正社員、妻=専業主婦またはパート」「会社の命令や業務が最優先」であったのと比較すると、隔世の感があります。多様な人が同じ職場で働く今日、指示・命令・管理でチームを動かすことはできません。上司として組織をまとめ、成果を上げるには、部下一人ひとりと対話し、相手の持ち味を活かし、信じて任せるしかないのです。

 必定、上司は人間的に偉いわけではなく、あくまで「役割」だと考えることが常識になります。上司と部下は人間としては対等で、ただ組織でよりよい仕事を進めるために、互いに役割分担をしていると理解することです。

 上司とは、部下の働きがいと活躍・成長を支援する役割と自覚し、その役に徹すること。その先には、上司自身も働きがいを感じられ、リーダーとして成長できるでしょう。

【 解説 】

人の心を動かすリーダーを目指して
〜「本物の上司力」を磨く〜

 連載第12回では、「上司力」を発揮するためには、まず部下を信じ、任せ、応援すること、そして上司は役割と心得ること、を論じました。ここでのポイントは、本当のリーダーシップとは職位や権限による指示・命令でヘッドシップを行使することではなく、相手の主体性・自律性を重んじ、納得を得て人を動かす力だということです。

 そこで、この点に関わって、リーダーとして人の心を動かすことに着目してみましょう。

上司に求められるヒューマン・スキルとコンセプチュアル・スキル

 組織で働くうえで必要なスキルは、ロバート・カッツモデルによれば、「テクニカル・スキル(業務遂行能力)」「ヒューマン・スキル(対人関係能力)」「コンセプチュアル・スキル(概念化能力)」の3つに整理することができます。



 テクニカル・スキルはその名前のとおり、実務的な業務遂行に必要な技能であり、現場プレイヤーとして磨き上げていくもの。「自分を動かすスキル」ともいえます。プレイングマネジャーとして仕事をしている方のなかには、自分のテクニカル・スキルへの自信と自負が強い方もいることでしょう。

 しかし、ミドル層やトップ層の立場で、テクニカル・スキルで勝負をしていくには、相当に突出した高い技能が求められるでしょう。また、テクニカル・スキルは、今後はAIやロボットに代替されていく可能性が高い領域です。したがって、テクニカル・スキルだけに頼り続けることは難しいのです。

 そこで重要になるのが、ヒューマン・スキルです。テクニカル・スキルが「自分を動かす」スキルなら、ヒューマン・スキルは「人を動かす」スキルといえます。これは、人に指示・命令して強引に言うことをきかせる力ではなく、相手の心を動かし、部下が自律的に仕事に向かう環境をつくる力です。

 経営層に近づくと、コンセプチュアル・スキルがより求められるようになります。これは、「概念化」の力で、会社の将来ビジョンを打ち出したり、経営方針を策定するといったスキルです。一対一のコミュニケーションで相手を動かすのがヒューマン・スキルなら、コンセプチュアル・スキルは組織をダイナミックに動かす力といえるでしょう。

 このように、上司=リーダーには、ヒューマン・スキルとコンセプチュアル・スキルに磨きをかけていくことが求められます。ここでは、「人の心を動かす」観点から、ヒューマン・スキルに着目しておきましょう。

感謝のエピソード

 私たちが実施する「上司力研修」では、上司のヒューマン・スキルを向上させるプログラムの一環で、「部下に感謝したエピソードを、受講者どうしで共有する」ワークをよく行います。

 上司は、部下に対し不満を抱えていることが多いものです。「部下が指示待ちで困る」「指示しても、そのとおりにできない」「文句ばかり言う」「モチベーションが低い」…部下の日頃の状況を訊くと、ネガティブな言葉が炸裂します。しかし、私が部下に感謝したエピソードを思い出すようにと促すと、上司からはさまざまなエピソードが出てくるのです。

 「私が病気で出勤できず、お客さまのフォローを部下に任せたら、機転を利かせて上手に対処してくれた」「人事異動で新しい部署に来て、右も左もわからないなか、部長にあれこれ指示され困っていたときに、部下が『部長の求めは、こういうことだと思います』と資料を作って助けてくれた」「自分の誕生日に出社したら、部下たちが花束でお祝いをしてくれて、とても嬉しかった」

…こうしたエピソードを語るときの上司の皆さんの表情は、笑顔でいっぱいなのです。

人の心を動かす瞬間

 上司が部下に感謝したエピソードには、共通点があります。それは、上司が部下に「この方向に動いてほしい」と願う方向に、部下がしっかり動いてくれている場面であることです。

 そこで、私は感謝のエピソードに対し、「そのとき、恥ずかしがらずに『ありがとう』と言えましたか?」と尋ねます。そして、ぜひ心を込めて感謝を伝えるように促します。なぜなら、上司が喜んだことを理解すれば、部下も嬉しいと感じ、もっとその行動をしようと考えるものだからです。そして、この「ありがとう」を言えたときが、上司が部下の心を動かせる瞬間なのです。

 上司の皆さんが、部下にインセンティブを与えるようとすると、「飲みに連れ出し、ご馳走しよう」と考えがちではないですか。しかし、これは今や部下にとって逆効果ですらあります。そうではなく、仕事のなかでどんどん感謝し、それを言葉で伝えることで、部下の心を動かすことを考えましょう。

 かつて、上司力研修を受講した一人の管理職から、ご連絡をいただきました。その方は、「感謝すれば部下の心が動く」を信じ、実践してみたというのです。

 「私には5人の部下がいますが、これまでは日頃、9割がた腹の立つことばかりでした。そこで意識して、部下に感謝したことを1週間分メモして、翌週の朝礼で伝える習慣を始めました。『先週は、〇〇をやってくれてありがとう』と部下一人ひとりに伝え続けたのです。すると、それまで一体感がなくギクシャクしていたチームの雰囲気が、次第に変わり始めました。半年たった頃には、5人の部下は全員が高いモチベーションで仕事に取り組んでくれるようになったのです!」

愛の反対は無関心

 2020年6月に「パワハラ防止法」が施行され、企業に職場のハラスメント防止が義務付けられました(中小企業は2022年4月施行)。近年のハラスメントへの意識の高まりもあり、上司が部下を指導する際に、「これはハラスメントになるのでは?」と悩み、言動を抑制するケースも増えていると聞きます。企業側も、管理職層に対し、行政が示すハラスメントの典型例を示し防止を呼びかけ、上司が怒りをコントロールするアンガーマネジメント研修を実施するなど、対策に懸命です。

 しかし、上司が部下への言動に悩み関係を控えたり、企業が上司に対して禁止事項の周知や研修を行うことは、ハラスメント事案を抑える効果はあっても、部下と上司のよい関係を築くための根本的解決にはならないと、私は考えています。なぜなら、そこには「事なかれ主義」があるからです。「地雷を踏みたくない」と思えば、上司は部下に関わることを避け、部下の気持ちや成長に無関心になりかねません。

 私は、マザー・テレサの名言のとおり、「愛の反対は無関心」だと考えています。部下に対し「面倒を起こしたくない、関わりたくない」と考える「事なかれ上司」は、表面上は穏やかで平和的ですが、そこに愛情はありません。

相手を思い一歩踏み込む「厳しい愛」を持つ

 一方、部下に対する愛情はあっても優しさがないと、部下の意見を聞いたり持ち味を活かす視点が欠け、上司の考えを押し付ける過干渉に陥りがちです。「俺の背中についてこい!」という旧来型の上司は、意図せず「ハラスメント上司」となるリスクが高いのです。

 また、「ダメな部下は取り替えればいい」といういわば「冷酷な上司」は、部下に関心も優しさもないタイプです。近年は「冷酷な上司」は少なく、「ハラスメント上司」も減少傾向にあります。しかし、それに代わって増えているのが「事なかれ上司」ではないでしょうか。しかし、私がみなさんに目指してほしいのは、優しさと愛情を持って部下に接する「本物の上司」です。

 この「優しさ」とは、決して部下を甘やかすことではありません。必要な配慮や支援は行いつつも、「仕事を任せた以上、当事者はあなた。任された仕事の範囲で、きちんと責任を負ってほしい」と部下に強く迫れる厳しさこそ、部下への正しい愛情の形です。ときに嫌われることがあっても一歩踏み込み、本人のためにも必要なら、厳しく叱ることをいとわない。それが本物の上司であり、本物の「上司力」だと思うのです。

 皆さんが「本物の上司力」を磨き続け、部下の育成に力を発揮されることを心から願っています。


【ご意見・ご感想をお寄せください】

 上司である皆さんが、日々職場で実感しているマネジメントの課題(部下育成上の困難や悩み)は何ですか? 「ご意見・ご感想」送信フォームから、本連載へのご感想と併せてお寄せください。今後の企画・執筆の参考にさせていただきます。

第11回

【STEP⑤】「評価納得」を得る《その2》
部下が主体性を発揮し成長し続けるための「人を育てる3つのステップ」

【紙上講座(新聞掲載)】

現場で人が成長する「3つのステップ」

 上司は、結果が良くても悪くても、部下本人が一定期間の自分の仕事の評価に納得し、振り返りを通じて今後の成長に活かせるよう、フィードバックすることが大切です。そのためには、どのような働きかけが有効でしょうか。

 私は人が仕事を通して成長するには、「3つのステップ」があると考えています。

 【第1ステップ】は、仕事を「任される」ことです。これには、①上司から仕事の目的をしっかりと伝えられ、②「あなただからこそ任せたい」と動機づけられ、③その上で部下自身が仕事の見通しと目標を自らの意思で表明し、④上司に目標とプロセスを提案してお互いに共有し合う、というプロセスを含みます。

 【第2ステップ】は、「やり遂げる」ことです。任された仕事の主体者は部下自身ですから、その達成責任も部下が担います。難しい局面が出てきても、途中で投げ出させてはいけません。部下自身が周囲に頼み、巻き込む努力をしながらでも、自分で最後までやり遂げられるよう、良き相談相手になることです。

 そして、【第3ステップ】が「振り返る」ことです。仕事は、様々な環境要因の影響から、見通しどおりにいかない場合もあります。しかし評価を受ける一定期間はあくまで節目です。上司とともに振り返ることが、次なる成長へとつながるのです。


上司が関わる「3つの支援」

 部下にとっての「3つのステップ」を、上司側から見ると、「任せる」「応援する」「内省させる」という「3つの支援」になります。上司は部下を育て活かすために、「3つのステップ」すべてに関与すべきです。

 400社以上で「上司力研修」を開講して感じるのは、上司の多くが、第1段階の「任せる」ことにつまづく傾向です。部下本人の実力より少し重い仕事を任せるのは勇気がいるからです。自分は本当に「任せきれている」かどうか、ぜひ振り返ってみてください。

 次に、部下が任された仕事をやり遂げるためには、上司は「応援」し続けることです。仕事のプロセスでは、アクシデントが次々と起こるもの。そこでは、「自分がやったほうが早い」という考えが頭をよぎるでしょうが、決して部下の仕事を奪ってはいけません。任された仕事で主体性を発揮するのは部下自身です。本人が打開策を考え行動できるよう導きましょう。

 部下が経験値の浅い仕事に悩んでいるときにも、安易に答えを教えることも避けましょう。仕事の主体者は、あくまでも部下自身。本人自ら進め方に気づけるよう質問を投げかけたり、適切な人脈を紹介するなど、サポートすることが大事です。

 そして節目には、部下がやり遂げた仕事を有効に振り返れるよう、上司は部下に「内省させる」ことです。見通し以上の結果が出た場合に、単に「今期は上出来だったね」と伝えるだけでは、部下は学びを逃してしまいかねません。

 「期初にあなたの役割を確認し、一緒に目標を決めたね。目標達成までのプロセスにはいろいろあったと思うけれど、まず自分自身で振り返ってほしい。今期の仕事について、どう思っている?」などと問いかけます。

 内省させるうえで重要な視点は、一定期間の期末評価はあくまでも一時期の断面を表したものに過ぎないこと。部下の成長は続きます。次のチャレンジへどう向かっていくかが大切なことを、部下に腹落ちさせることです。

 この「3つのステップ」と「3つの支援」によって、部下と上司がうまく噛み合うことができれば、たとえ一時の評価が振るわなくても、部下はモチベーションを保ち、育成も進むでしょう。


評価より重要な「ゴールセッティング」と「フィードバック」

 私が注目する、企業事例を紹介しましょう。株式会社ユーザベースは、NewsPicksやSPEEDAなどのメディアを運営しています。他社でキャリアを重ねたジャーナリストやITエンジニアなど、多様なバックボーンの人材が続々と集っています。こうした多様な人が活躍しながら、創業からわずか10数年で7つのグループ会社を擁するなど、急成長を遂げているのです。

 同社の人材育成と組織運営で刮目させられるのは、社員を「評価」するのではなく、「GSFB(ゴールセッティング・フィードバック)」をするという考え方です。GSFBとはすなわち、社員一人ひとりが自分の仕事の目標(ゴール)を自分でセットし、そこに向かえるよう、周囲がフィードバックし合うという方法です。これはまさに、先述の「3つのステップ」「3つの支援」に重なります。

 GSFBでは、仕事の主体者は上司ではなく「ゴール」を決めた本人。そして、フィードバックは上司と部下の間のみならず、先輩や同僚などからも伝え合う「オープンコミュニケーション」が奨励されているのです。こうした相互にフィードバックしあう文化によって、組織で働く全員が切磋琢磨し、改善・改革が進む組織が形成されているのです。


「やる気を削がない支援」こそ、人と組織が育つ土台

 上司の皆さんは、どうすれば部下がやる気を出してくれるのかと悩んでいることでしょう。一方、ユーザベースは、もともと社員一人ひとりにはやる気があり、それを組織側が削がないことが大切と考えているのです。

 あらゆる業界でデジタルトランスフォーメーションが起きる中、マスコミ系企業は厳しい経営環境に置かれています。そうした環境下でも、ユーザベースが「経済情報で世界を変える」とのミッションのもと、急成長を遂げている原動力は、人の活かし方にあるのでしょう。

 多様な部下が、もともと持っているやる気を削がれることなく、自分がセットした目標に向かって一直線に走れること。そして、それを周囲が支援する風土が作られていること。皆さんの職場でも、この取り組みに学び、取り入れられることはあるのではないでしょうか。

【 解説 】

「アドバイスより傾聴」を心がける

 連載の10回と11回では、部下の成長を促すための「評価納得」の方法について述べてきました。これは、具体的には部下との評価面談によって行います。部下の意見や気持ちにじっくりと耳を傾けながら、本人の内省を促していくことが鍵になるのです。その際、重要になるのが、上司の傾聴力です。

 部下を次なる成長に向かわせたいと願うとき、経験豊富な上司ほど、部下にいろいろと有益な指示・命令やアドバイスをしたくなることでしょう。しかし、支援者としての上司力には、指示・命令する力は有効ではないもの、と心得ましょう。

 特に、部下が自分で考える前に上司の考えを指示やアドバイスすることは、部下の育成上、良策ではありません。繰り返しになりますが、仕事の主体者はあくまでも部下自身であり、成長を促す意味でも部下にいかに考えさせるかが重要なのです。そして、部下に考えさせるために必須なのが、傾聴のスキルです。

 通常、傾聴というと、黙ってじっくり聴くことをイメージしがちかと思います。しかし、アドバイスしたいのをぐっと堪えて、黙って聞くのは傾聴本来の姿ではありません。大切なのは、部下の考えをしっかり理解するために意思を持って積極的に聞く、アクティブリスニングの姿勢なのです。

 そのためには、上司が適宜、部下に問いかけることも必要なのです。特に部下の考えがまとまらない場合など、もやを払ってあげるような上手な質問を投げかけることも、上司には求められるのです。

傾聴の6つのステップ

 それでは、部下の考えをしっかり引き出すための「傾聴の6つのステップ」を順に解説していきます。最近では、在宅勤務などリモートワークが進むなかでのオンライン面談の場面も考えられます。その点も含んで見ていきましょう。



■ステップ①「姿勢」を整える(座り方、視線、動き)

 まず、話を聴く準備と心構えができていることを、相手に示します。リアルでの対話では、椅子に姿勢を正しく保ちリラックスして座ります。椅子に浅めに腰かけた、やや前傾姿勢がよいでしょう。視線は相手の目のあたりを中心に向けますが、凝視しないように気をつけます。身振り手振りなど上半身の動きは自然に行います。自分と相手の座る位置は、正面から対峙せず、90度の角度か隣に座るのがよいでしょう。

 リモートワークでの、オンライン・ミーティングの場合には、リラックスした表情や笑顔を心がけ、身振り、手振りはやや大きく、また、はっきりとした聴き取りやすい声で、ゆっくりと話すように、態勢を整えましょう。

■ステップ②「受容」する(頷き、相槌)

 共感的な印象を与えるには、相手の話に合わせた適度な頷きや相槌が効果的です。首を縦にふり、話の要所要所で「うん、うん」「そうか」などと声を発すると、相手の「受け入れてもらっている感」が増します。相手の話のリズムや内容に応じて、頷き方や相槌の速度や深さにも、変化を付けるとよいでしょう。

 リアルの対話では、頷きや相槌が大げさすぎたり、頻度が多すぎると、わざとらしく見えて逆効果です。但し、リモートの場合には、ややオーバーアクション気味にして、相手にしっかりと伝わることが大事です。

■ステップ③「共感」する(気持ち、感情の汲み取り)

 「そんなふうに思ったんだね」「それはとても嬉しかったね(辛かったね)」など、相手の気持ち・感情を汲み取るのが共感です。相手に「気持ちをわかってもらえている感」を与えるのです。

 なお、共感は同調とは異なります。共感が「~と感じたんだね」と相手の気持ちや考えを理解し受け止めるのに対し、同調は「そうだね、それが一番いい選択だね」などと相手に同意することです。上司は、部下に共感はしても必ずしも同意はせず、異なる意見を持っていても構わないのです。この二つを、はっきりと区別して理解しておくことが大切です。

■ステップ④「確認」する(繰り返し、言い換え)

 次に、相手の話の内容や、気持ち・感情を確認します。その方法として、相手の話のポイントを復唱する「繰り返し」と、相手の言葉を別の表現で確認する「言い換え」が有効です。

 「今回の新しい仕事には、やりがいを感じます」との言葉に、「やりがいを感じてるんだね」と復唱したり、「ただ、いくつかの仕事が重なってくると、どれから手をつけたらいいか悩んでしまうんです」との相談に、「複数の仕事の優先順位づけがうまくいかないんだね」などと言い換える方法です。

 話し相手には、あなたに自分の話や気持ちが伝わったことがわかり、安心と納得が得られます。

■ステップ⑤「理解」を示す(要約)

 さらに、相手が伝えたい内容を正しく理解していることを示すために、話の要点を短く伝え返す「要約」を行います。「要点を整理すると、〇〇と○○が課題で、改善のためには○○が必要と考えているんだね」といった具合です。

 要約にあたっては、自分の思い込みの押しつけにならないように気をつけましょう。相手の反応をよく見聴きして、捉え方にズレがあるようなら、どこにズレがあるのかをきちんと聴き直し、再確認していくことが大切です。

■ステップ⑥「内省」に導く(質問)

 傾聴の真価は、最後に部下に「質問」を投げかけ、本人の内省を促し、深く考えさせることにある、と言っても過言ではありません。

 上記までのステップで部下の問題意識や悩みを把握したら、それについて「では、なぜそう思う?」「あなたには何ができる?」「どうすればいい?」と問いかけ、本人に考えさせるのです。

 「仕事が進まないのは人のせい」「自分はやらされているだけ」といった「他責」(他人の責任)でとらえている限り、部下は「仕事の主人公」にはなれません。「自分ならこうする」「このやり方で任せてほしい」と「自責」(自分の責任・役割)でとらえられた時に、自ら主体性と働きがいをもって仕事ができます。常に、部下の内発的動機づけと自律性を高める支援が大切なのです。


【ご意見・ご感想をお寄せください】

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第10回

【STEP⑤】「評価納得」を得る《その1》
部下に節目ごとの仕事を振り返らせ、評価に納得させて、次なる成長に向かわせる

【紙上講座(新聞掲載)】

評価は「仕事やキャリアの一時の断面図」

 「支援型マネジメント」のステップとして、ここまでに、部下との信頼関係づくり、組織目的の共有と仕事の付与、チーム作りと改革・改善の自律的な実行促進などを取り上げました。これらに加え上司が行うべきは、半期や一年の節目ごとに部下を評価し、納得を得ながら次なる仕事へと向かわせることです。評価しフィードバック(評価を伝え学ばせること)をして部下を育成することは、重要な上司の役割です。

 この役割を果たすうえで理解しておくべきは、「評価とは一時の断面図にすぎない」ことです。これには、目標管理制度(MBO:Management by Objectives)への正しい理解が役立ちます。目標管理制度は、米国の経営学者P.ドラッカーが考案したもので、日本の多くの企業が応用しながら導入しています。ドラッカーは人事評価ありきではなく、上司が部下とコミュニケーションを図りながら適切なマネジメントを進める実践法と考えていました。

 しかし、1990年代に広がった成果主義と連動して定着したため、ともすれば「目標達成は○」「未達は×」という結果だけを追う評価になりがちでした。一方、部下自身が自律的に働くなかでは、仕事の試行錯誤や失敗もあり、そこからの学びが重要です。この学習経験が長期的に人を育てるのです。ところが、上司が短期的な結果だけの評価に終始すれば、そのプロセスの否定となり、部下はやる気を失うでしょう。

 そもそも、仕事とは半期や一年で終わるものではありません。会社の目的(=企業理念)やチームの目的は、長期的な視野で達成を目指すものです。確かに、上司による部下の評価は、半期や一年の区切りで行わざるをえません。ただし、期ごとの評価は長期的な仕事や部下の長いキャリアの一つの断面図にしかすぎないと捉えることです。若かりし頃や、初めての仕事に取り組む際は失敗の連続でも、後々仕事のできるプロやリーダーになる例はいくらでもあるのです。上司のあなた自身も、そうだったかもしれませんよね。


部下の評価に上司がいかに関わるかが重要

 私が前職でITエンジニアのキャリア支援サイト「Tech 総研」編集長だった時に、現場で働く人たちに取材を続けるなかで、仕事の評価に関わる印象深い体験がありました。業績評価とモチベーションは、単純な相関関係にあるのではないことを知ったのです。

 現場で働くITエンジニアには、業績評価が良く、ボーナスも増え、昇進の可能性も高いのに、あまりモチベーションが上がらない人たちがいる一方、業績評価は芳しくないのに、やる気に満ち溢れている人たちがいたのです。

 インタビュー対象のITエンジニアの共通点は、クライアント企業に常駐して仕事をすることが多く、上司と職場が一緒ではないことです。日常的に上司に仕事ぶりを見てもらうことがなく、評価は自分が担うシステム開発業務の節目の結果によるケースが多いのです。そして、上司から高評価を受けた人でも、「高い評価は、たまたま業務の節目で高いパフォーマンスが出ただけ」「プロセスを見ず結果だけの評価は、あまり嬉しくない」というのです。

 一方、業績評価が低いのにやる気に満ち溢れたITエンジニアたちの典型的な声は、次のようなものでした。「確かに今期の評価は非常に厳しく、昇給・昇格も難しい。でも自分が考えたやり方の結果だし、常々、上司とよくコミュニケーションもとれている。納得した目標に届かなかったのは事実なので、評価は納得している。その上で、この学びを来期にどう活かすか上司としっかり話し合ったので、来期は挽回したい。」

 すなわち、重要なことは評価の内容以上に、上司が部下に対し、いかに自分が出した評価に納得を得られるか、言い換えれば、評価の前後に上司が部下にいかに関わるかだったのです。


評価が良くても悪くても受け入れてもらうには

 以上の例からわかるのは、良い評価であれ悪い評価であれ、「長期的な部下の成長」の視点から下したもので、それが部下に伝わるなら、部下は納得するということです。

 私が営む会社で上司力研修を数多く行うなか、部下への厳しい評価をどう伝えるか、フィードバックの仕方を学ぶ面談研修は人気のプログラムです。真面目な上司ほど部下に厳しい評価をどう伝えるべきか、日々悩み続けているのです。フィードバックの仕方を間違えれば、部下のモチベーションは下がり、ひいてはチームのパフォーマンスに悪い影響を及ぼします。

 しかし先に解説したように、上司からの評価に対する部下の捉え方は、目標達成の○✕のみで決まるものではありません。重要なのは、長期的な視野で「現時点の評価を踏まえ、今後どうするか」を上司と部下が共に考えることです。そして「上司=支援者、伴走者」であることを部下に理解してもらえたなら、厳しい評価を伝えること自体を気に病む必要はまったくないのです。


重要なのは期初の役割設定

部下への評価に、本人の納得を得るのに最も重要なのは、期初の部下の役割と目標の設定です。残念ながら、本稿をはじめて読む皆さんが、部下に今すぐ厳しい評価を伝えなければならない場合、上記のアドバイスも役に立たないかもしれません。なぜなら、厳しい評価を伝える面談で、その場しのぎの小手先の語り方で部下の納得を得ることは難しいからです。

 大事なのは、期初の部下の役割と目標が、部下自身も納得して定めたもので、上司と部下でしっかりと握り合っていること。そして、一度任せた仕事の当事者は部下自身とはいえ、上司も伴走して喜怒哀楽を共にすることです。その上で、期末時点の評価は、部下自身が決めた目標の達成度合いに基づいて厳正に行うのです。

 部下自身が当初目標に向けて創意工夫し仕事を頑張っても、顧客や環境の変化の影響で、数字として業績があがらないことは十分に起こりえます。その場合、上司も評価自体は厳しくせざるを得ません。そうであっても、上司が伴走者として部下の努力を適切にサポートできており、今後の課題や部下の挽回の道筋を共に考える姿勢であれば、部下は上司からの評価を前向きに受け止めることができるのです。

【 解説 】

自分の成長可能性を信じる人が伸びる

 連載第10回では、半期や年間の部下の仕事の評価について、上司が持つべき視点と姿勢について解説しました。仕事の業績向上と部下のキャリアアップにつなげるためにも、部下自身の意欲と成長を促す評価とフィードバックが重要になります。

 そこで、フィードバックによって、いかに部下のモチベーションと能力を高めるか。その一つのヒントとして、アメリカの心理学者キャロル・S・ドゥエックが提唱する「成長マインドセット」の考え方を紹介しましょう。

マインドセットによって人の成長度合いが変わる

 ドゥエックは、「人間の能力は、学習や経験によって伸ばせるものか、生まれもったもので変化しないものか」という論争が昔も今も続いているが、20年来の研究で明らかになったことは、そのどちらを信じるかによって、その人自身の未来が大きく変わるといいます。

 すなわち、「人の能力は、石版に刻まれたように変わらない」と信じている人を「固定マインドセット(fixed-mindset)」とし、「人間の基本的資質は、努力しだいで伸ばすことができる」という信念を持っている人を「成長マインドセット(growth-mindset)」とし、その違いでその人の成長が大きく異なってくるというのです。

固定マインドセットは自分に限界をつくる

 固定マインドセットの人にとって能力は固定的なので、自分の賢さ、才能、価値を実証でき確認できれば成功ですし、つまずいたら失敗です。落第点を取る、試合に負ける、会社を解雇される、人から拒絶されるといったことは、全て能力や才能がない証拠です。

 挫折と同様に、努力さえも忌まわしい行為です。なぜなら、そもそも能力が高ければ努力や苦労の必要はないからです。そのため、他人からの評価を気にし、自分の有能さを示すことに腐心し、自分は勝ち組でいられるか、負け組にはならないかを、常に心配してしまうのです。

 固定マインドセットの人が失敗や挫折を経験すると、「自分はダメ人間」「負け犬」「価値のない人間」などと感じ、これが自分の限界だとあきらめてしまう。そして、無力感に陥り、再起・成長のための努力や工夫を放棄してしまいがちだというのです。

成長マインドセットは常にチャレンジへと導く

 一方の成長マインドセットの人は、持って生まれた才能、適性、興味、気質は一人ひとり異なるけれど、努力と工夫を重ねることで、誰でも大きく伸びていけるという信念を持っています。失敗とは成長が足りないことであり、自分が大切だと思うものを追求せず、可能性を十分に発揮できなかった結果だと考えます。そのため、思い通りに行かずうまくいかない時には、それはなぜなのか、どうすればうまくいくのか、そのために自分はどうすればいいのかと粘り強く考えます。

 能力は伸ばせるものと信じる人は、努力や工夫こそが人を賢く有能にしてくれると考えます。こうして成功マインドセットの人は、さらにチャレンジを重ね、人生の試練を乗り越える力を発揮して、より成長していくのです。

支援者のマインドセットが重要

 ドゥエックは、さらに、親や教師など教育者、支援者のマインドセットと支援方法の重要性も指摘します。支援者がまず成長マインドセットであることが大切なのは言うまでもありません。

 その根底にあるのは「人は変われる」という信念であり、成長を信じることが基本です。そして、相手の成功を称賛する時はその能力の高さではなく、プロセスとその結果に着目し、失敗を注意する時も能力ではなくその原因と今後の改善の方向に着目するのです。

 本人の内省を促しながら、本人自身が成長マインドセットを持続できるように支援していくことが大切なのです。

【参考文献】「MINDSET「やればできる!」の研究」

編著:キャロル・S・ドゥエック/訳者:今西康子

出版社:草思社/発売日:2008年11月1日


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第9回

【STEP④】「切磋琢磨」を促す《その2》
チームの相互啓発を促し、退屈な「作業」をワクワクする「仕事」に変える

【紙上講座(新聞掲載)】

互いに啓発し合う定例ミーティング

 一人ひとりの部下が当事者意識を持って仕事に取り組み始め、自ら創意工夫をできるようになったなら、それをチームの定例ミーティングで報告し合いましょう。チームが同じ目的に向かって仕事をしていることを理解し、お互いの役割を把握したうえで、各自が切磋琢磨している様子を共有するのです。

 そうすれば、「メンバー皆が頑張っているのだから、私も頑張ろう」と、チームの中にお互いが啓発し合う風土が生まれます。こうなれば、チームの成長はぐんと加速していきます。

 ミーティングでメンバー同士の啓発を促すには、上司の適切なファシリテーションが欠かせません。仕事の生産性や効率が重視される昨今、メンバーは自分の仕事以外に関心を持ちにくく、チームワークが失われがちです。コロナ禍でリモートワークが増えるなかでは、部下一人ひとりの仕事がタコツボ化しやすいためなおさらです。それだけに、メンバー全員が集まる定例ミーティングは、各自にチームとして仕事をしている意識を醸成する貴重な場です。

 上司のファシリテーションのポイントは、部下に互いの仕事の関連性を意識させることです。部下に自分の報告だけでなく、他のメンバーの仕事についてもよく理解させ、「どうすれば組織の目的達成により近づけるか」を質問やアドバイスし合えるよう促します。困りごとを報告する部下がいれば、「〇〇さんから何かアドバイスできることはない?」と、他のメンバーに話を振るのも一つです。

 上手くいっている部下の報告でも、皆に「さらによくしていくためのアイデアは?」と投げかけ、より前向きな話し合いを進めます。発言した部下には、その中身の是非を問う前に、発言した貢献に対して「ありがとう」と伝えましょう。

 メンバーがお互いの仕事について考え合い、安心して意見を言い合える場を作ることが、チームが目的に向かって一丸となり、相互啓発し合う関係に繋がるのです。


「他のメンバーへの貢献や協力は仕事の一環」と位置づける

 上司への研修では、「部下が同僚をライバルと考え、仲が悪い。お互いに協力し合うために上司は何をすべきか」との質問がよく出ます。私は、「組織の目的と、その目的達成のために各自がどのような役割を担い、いかに関係し合って仕事を進めるかを明示したチームの組織図を上司が作り(本連載第6回「部下一人ひとりの強みを活かす組織図づくり」参照)、しっかり共有できれば、協力関係は生まれるはず」と答えます。

 部下が自分の仕事しか考えられない状況に陥るのを防ぐには、上司が部下の役割を設定し仕事を任せる際に、「協力し合うのも役割の一つ」と明確に伝えることです。そのうえで、定例ミーティングはもちろん普段の仕事でも、他のメンバーへの協力をしっかり認めることです。業績評価の項目に入れることもよいでしょう。他のメンバーやチームワークに寄与する行動を個々人の善意に委ねるのではなく、仕事の一環だと認識させるのです。

 また、「サンキューカード」など、お互いの協力に対し気軽に感謝を伝え合える仕掛けもよいでしょう。「ちょっとしたサポート」になる仕事を歓迎し褒め合う仕組みは、今後一層重要性が増すはずです。日本のメンバーシップ型雇用の中でチームがうまく回ってきたのは、互いの仕事の境界が明確でないなか、「ちょっとしたサポート」を互いに阿吽の呼吸で担い合ってきたからです。しかし、今やリモートワークなども広がり、一人ひとりの役割を明確化するジョブ型へと舵を切り始める企業も増えていくでしょう。

 そこで、上司が部下に仕事を任せる際に、これまで光が当たらなかった「ちょっとしたサポート」にも目を向けることが大切です。意義を強調するとともに業務として明確化し、率先して担った人に評価や感謝が届く仕組みをつくるのも、上司の仕事なのです。


退屈な「作業」を「仕事」に変える支援

 本連載の第8回(前回)で、部下が自律的に仕事に取り組み、自ら業務の改善を図れるためには、「キャリアの小さな階段作り」が有効だとしました。しかし、上司が部下一人ひとりの全ての仕事に「小さな階段づくり」をするのは困難です。そこで取り入れたいのが、部下側から上司に仕事の目的を質問させ、作業のやり方を提案させ、相談させる方法です。

 部下が上司から仕事を依頼された際に、「作業」を自ら「仕事」に変えるために、次の3つのステップを踏ませるのです。


【ステップ①】部下から上司に、作業の目的を「質問」する

【ステップ②】部下が作業方法を工夫し、上司に「提案」する

【ステップ③】部下は上司に「相談」して承認を得る


 ステップ➀の「質問」では、部下が上司から作業依頼を受けた時に、「はい、わかりました」と言われたままに作業をするのではなく、「これは何のための作業か、目的を教えていただけますか?」と尋ね、作業のゴールイメージを聴き取る習慣をつけさせます。

 この対話のためには、上司も上層部からの指示を上意下達で部下に下すのみではなく、その目的をしっかり腹落ちさせて、部下に説明することが不可欠です。上司自身が上層部と対話し、チームや部下に任せる仕事の意義を納得していなければならないわけです。部下は上司の説明で作業の目的がよく理解できれば、自分でやり方を工夫しやすくなるのです。

 そのうえで、部下にはステップ②の「提案」をさせます。部下から「私が考えるには、こうしたやり方も効果的だと思いますが、いかがでしょう」など、自分の創意工夫を具体的に説明させます。上司の目から見れば、部下の提案を心もとなく感じたり、そのまま承認できない場合もあるでしょう。

 そこでステップ③の「相談」を進めます。ポイントは、上司の考えを押し付けず、部下の提案や工夫を尊重し、発展させながら部下のモチベーションを高めることです。意見を交わしながら、部下自身に作業のプロセスを熟考させ、十分納得した上で上司の承認を得るようにします。

 そうすれば、部下にとって退屈になりがちな「作業」も、自ら率先して取り組む意味と張り合いのある「仕事」へと変わることでしょう。

【 解説 】

仕事に没頭し熱中する喜び

 連載の第8回(前回)と第9回(今回)では、部下が自ら切磋琢磨しようとする意欲を持たせるための支援と、これをチームで共有しより高め合う支援の意義と方法を解説しました。

 こうした自律的に働く個人とチームが成り立つ前提となるのは、チームメンバー一人ひとりが仕事を「大切なわが事」として意欲的に受け止め、率先して進めようとする状態にあることです。反対に、上司も部下も、仕事を「やらなければならない苦役」とだけ受け止めるなら、お互いの役割や関係も辛く感じることでしょう。

 そこで、どうすれば仕事を「没頭して熱中する喜びや楽しみ」と感じることができるのか。ハンガリー出身の心理学者ミハイ・チクセントミハイによる、「フロー理論」を紹介しましょう。

フローとは何か

 チクセントミハイは、大人が面白さや楽しみを得ることだけに没頭する体験に共通する条件を調べました。この感情は、レジャー、趣味、仕事などを問わず、遊びのような性格を持つ「何か」をしている時に起こりやすくなります。自発的で、その行為自体が最高に楽しく、ワクワクし、その生み出す感覚のゆえに夢中になる状態であり、これを「フロー」と名付けました。それは、この体験を語る多くの人が、この状態を淀みなく自然に流れる水に例えて「フロー〈流れ〉の中にいるようだ」と表現したからだとします。


 フロー体験に共通の条件は次のとおりです


①目標が明確である(達成のために何をすべきかが明らか)

②迅速なフィードバックがある(行為の結果・成果を直ぐに実感できる)

③スキル(技能)とチャレンジ(挑戦)のバランスがぎりぎりで取れている(十二分に力を発揮できるストレッチを要する活動)

④その活動に集中している(一点に関心を焦点化)

⑤時を忘れ、忘我の状態にある(無我夢中で行う)

⑥自分の行動をコントロールできていると感じている(確かな有能感)

⑦世界と一体化していると感じている(安定した充足感)

仕事とフローをめぐる矛盾

 チクセントミハイは、さまざまな活動とフローとの関係を分析し、仕事との関係についても興味深いコメントを記しています。

 まず、大人のフロー体験の機会を調べると、家にいるプライベートな時間や自由時間よりも仕事をしている時により多く報告されているのです。一方で、ワークライフバランスが重視されるように、多くの人はなるべく早く仕事を離れ、私生活で自由な時間をより多く取ることが幸せな生活だと考えがちです。この矛盾はどこからくるのでしょうか。

仕事の位置づけや方法次第でフローは可能になる

 チクセントミハイは、その理由は第一に、経営者や管理者が働く人たちの幸せに無関心で、フロー体験ができる機会や構造づくりに無頓着だからだといいます。働く個々人も働きがいを期待できないから、早く職場から離れたいと望むわけです。

 第二に、長い間働く人たちが過酷な長時間労働を強いられてきた歴史があり、労働時間の短縮を勝ち取ってきた歴史から、自由時間が多いほど幸せだとの考え方が定着したからだとします。しかし、仕事を意義あるものにしようとして本気で取り組むことで、平凡な仕事でさえ人生の質を向上させうる事例も存在し、本来可能なことだと述べています。

 すなわち、経営者・管理者・リーダーが仕事の意味づけや方法を工夫し、社員・部下・後輩に適切な支援を行うことと、働く個々人が自分の仕事を意味あるものにする努力と工夫を行うことで、職場でフローを実現することは十分可能なのです。

【参考文献】「フロー体験入門」

著者:ミハイ・チクセントミハイ/監訳者:大森弘

出版社:世界思想社/発売日:2010年5月20日


【ご意見・ご感想をお寄せください】

 上司である皆さんが、日々職場で実感しているマネジメントの課題(部下育成上の困難や悩み)は何ですか? 「ご意見・ご感想」送信フォームから、本連載へのご感想と併せてお寄せください。今後の企画・執筆の参考にさせていただきます。

第8回

【STEP④】「切磋琢磨」を促す《その1》
部下の自律性を高め、自ら仕事を工夫・改善できる環境をつくる

【紙上講座(新聞掲載)】

任せた仕事の当時者は部下本人

 上司の悩みとして多く挙げられるのが、部下に自律性がないという問題意識。部下が指示待ちで、自ら動いてくれない。「これはどうすればいいですか?あれは誰に連絡すればいいですか?」と何事も指示を仰ぎに来る。これでは、プレイングマネジャーでもある自分の仕事も回らない、というわけです。

 しかし、私が営む会社が行う上司力研修で、受講者の上司にこの悩みの真因を掘り下げてもらうと、実は「失敗しないかと部下を信用できていなかった」「部下の仕事の結果は気にしても、本人の気持ちには無関心だった」、「部下に仕事を任せきれていなかった」などの意見が出始めます。ただし、これは深く内省したために気づけたもので、日々忙しい多くの上司は、無自覚のままです。

 みなさんは、心のどこかで「自分の最終判断なしに、チームの仕事の質は担保できない」「自分の考えや、やり方が正しいはずだ」という固定観念を持っていませんか。また、部下独自のアイデアや、自分と異なる仕事の進め方を退けてはいませんか。それでは、部下は自律的に動きません。こうして多くの上司は、本来望まれる「支援職」ではない「管理職」になってしまっているのです。

 長年にわたって様々な上司の皆さんを観察・支援するなか、感じることがあります。いつもバタバタと余裕なく走り回っている上司と、一方で涼しい顔で自分の仕事を卒なくこなし、チームでもしっかり成果をあげている上司がいるということ。なおかつ後者の上司は、平気で「まだ余裕ありますよ」と言うのにも関わらず、チームが高業績なことが多いのです。両者の違いを一言で言うなら、「部下に仕事を任せきり、部下を上手に活かせているかどうか」です。

 すなわち、部下一人ひとりが自ら動き、互いに啓発しあい切磋琢磨する組織風土をいかにつくるかが重要なのです。そのために上司は「任せた仕事の当事者は部下本人」であると心得て、部下の自律性を促す育成方法を講じることです。


キャリアの小さな階段をつくる

 仕事の目的と工夫の余地をセットで任せ、部下本人が仕事の当事者であることを自覚すると、部下は自然と自分の仕事の責任を負うようになり、自発的に仕事のやり方を工夫し始めます。自らの工夫がうまくいかなければ、原因を振り返り反省する姿勢もでてきます。自分自身が考えた仕事の仕方ですから、失敗しても上司や周囲の人のせいにせず、何とか自分で改善しようと考えます。

 部下自身による改善を促すには、失敗のリスクがない簡単な仕事ばかりではなく、「少し背伸びが必要な仕事」を上手に任せることが有効です。これを私は「3割ストレッチの法則」と呼んでいます。部下育成に不慣れな上司が部下に仕事を任せる時は、手取り足取り教えるか丸投げかになりがちです。手取り足取り教えれば、部下はミスなく仕事を完遂できます。しかし、それでは部下はいつまでたっても上司の指示に従う作業者のままです。「次はどうすればいいですか」と、上司に指示を仰ぎ続けかねません。一方の丸投げだと、経験の浅い部下なら何からやれば良いかがわからず仕事は止まったままとなり、結局周囲のフォローが必要です。これも、部下の成長に繋がりません。

 そこで、仕事の任せ方の王道は、手取り足取りでも丸投げでもない「キャリアの小さな階段づくり」です。一年がかりの仕事なら、まず一年後に何を達成したいかゴールイメージを共有します。その上で、1カ月後にどこを目指すか、それをクリアしたら2カ月後には何を達成するかと、中期~短期的なゴールを順に設定します。一歩ずつ階段を上がれるようにするのです。



 例えば、新しい営業戦略立案の仕事を任せる場合、「まず現場の営業に話を聞き、問題点を洗い出そう」「次は、その問題の中で解決の優先順位を考えよう」と、部下が自ら動けるようにステップを刻み、仕事を任せるのです。ステップの設計は最初にすべてを決めず、階段を登るタイミングで必ず上司と部下が対話を交わしながら決めていきます。できるだけ部下自身のアイデアを引き出しながら一緒にステップを設計することが、上司力の見せ所です。


プロセスは裁量に任せながら、妥協は許さない

 部下に仕事を任せると、難しい局面の時に部下が妥協しようとすることも少なくありません。うまくいかない仕事のやり方は、適切に変えるべき場合もあります。しかし、自分が一度約束した目標の実現を、安易に諦めさせてはいけません。上司としては「あなたは当事者として、やると言ったよね」と厳しく迫るべきです。仕事のプロセスについては裁量をもたせ自主判断に任せますが、約束した目標に対して安易に妥協することは許してはいけません。

 これは、例えば育児や介護などと両立しながら働く社員に対しても同じです。幼い子どもは体調が不安定なことも多く、「子どもが急に熱を出してしまい、今日は仕事ができません」という場面はよくあります。そのような時、「構わないから、今日は早く帰っていいよ」「在宅で仕事をしてもいい」と伝え、柔軟に対応します。しかしこれは、任せた仕事をやり遂げなくてよいということではありません。休んだり在宅で仕事をした分、どう挽回するかは本人に考え提案させます。自分でリカバリーできない場合は周囲の力を借りても構いませんが、それも含めて自分の仕事。上司に「どうすればいいですか」と、依存はさせないことです。「上司が最終的に巻き取ってくれて何とかなった」ではなく、「大変だったけれど、周囲の協力も得ながら自力でやり遂げた」とすることが、結果として部下本人の自信と成長にもなるのです。

【 解説 】

ステップを踏んだ伴走型の支援で、部下の成長を促す
~「小さなキャリアの階段づくり」の事例~

 今回のコラム本編では、部下の自律性を育てる「小さなキャリアの階段づくり」の大切さに触れました。そこで、そのイメージをより分かり易くお伝えするために、私が前職時代に関わった部下Hさんのエピソードを紹介しましょう。

朝9時に着席することが仕事⁉

 Hさんは入社から1年間、営業部署の仕事に就いていましたが、メンタル不調に陥り休みがちとなり、社会人2年目のタイミングで私が束ねるマーケティングチームに異動してきました。最初面談では全く元気がなく自信もない様子で、私の目を見て話せないほどでした。

 そこで、私はHさんの役割と仕事の任せ方を思案した上で、次のように伝えました。「私は今後1年かけて、あなたにこのチームで営業部門の担当者が活用できる調査データの分析・配信の仕事ができるようになってほしいと思っている。Hさんは、このチームで唯一、営業部門での経験があるからね。でも、いまのコンディションで急に初めての仕事に取り掛かるのは難しいと思う。だから最初の1カ月は、朝9時までに出社して、席に座ることを目標にしてほしい。その達成のためにどうすればいいかは、自分で考えて工夫してほしい。」彼は驚いた様子で、「それでいいんですか?」と聞き直しました。確かに朝9時に出社するだけでは、仕事とは言えません。しかしその時点のHさんはメンタル不調なのですから、慎重にステップを刻んだのです。

 Hさんは努力と工夫を始めましたが、最初は朝9時までに会社の席に座ることがうまくできませんでした。満員電車の通勤だけで疲れ果て、「今、途中下車して休んでいます。今日は間に合いません」と電話があることも、しばしば。私はチームメンバー全員に、「Hさんは朝9時出社に向けて工夫しているところだから、応援してあげて」と伝えました。彼からの電話を受けたメンバーは「分かった、今日は辛かったんだね。明日また頑張ろう」などと言葉をかけ続けてくれました。そして、彼が朝9時前に来て席に座れた日には、皆で「今日はよくやったね」と声をかけてくれます。そんな周囲の支えも力となり、Hさんも徐々に安定し、1カ月後には毎日9時に出社できるようになりました。

 本人に聞くところでは、営業部門にいた1年間は体調や心の状態を気にかけてくれる人はおらず、一方で業績管理だけは徹底される毎日。「お客さんのアポイントはどれだけ取れたか」「目標の数字にまだこれだけ足りない」と毎週のように上司から詰められた結果、彼は潰れてしまい、私のチームにやってきたのです。

 Hさんは職場の中に自分の居場所を見つけたことで、安心して会社に来れるようになりました。表情もすっかり変わり、私の目を見て話せるようになりました。「僕もやればできるんです。朝9時に会社に来られるんですよ」と言えるまでになりました。微笑ましく思ったものの、これはあくまでスタートラインです。

社内アンケート100件集約を次の目標に!

 私はHさんと面談し、2カ月目の目標を話し合いました。そして、営業現場で使える調査データの分析レポートづくりへの第一ステップとして、前任者が配信していた分析レポートの使い勝手の良し悪しを、現場の営業担当者に聞くことから始めることにしました。具体的には、営業担当者を対象に社内アンケートを行い、回答を100件集めるという目標を立てたのです。私は、こういいました。「この1カ月で現場営業パーソンから回答を100件集めるにはどうすればいいか、その工夫はあなたに任せるよ。」

 Hさんは自分でやり方を考え、営業担当者に向けて社内メールでアンケートを一斉に送りました。その結果、1週間で30件ほどの回答が集まりました。営業担当者はみんな忙しく、メールでのアンケート送付だけでは100件の回答を集めるのは難しかったのです。「30件しか集まりませんでした」と言いに来たHさんに、私は「100件集める仕事の責任者は、あなただよね。まだ3週間もあるのだから、どうすればあと70件集められるか考えよう」と言いました。Hさんは「営業部門時代の同期がいるので、直接声をかけてみます」と答えました。

 仕事を任せて2週間経った定例ミーティングで彼に報告を求めると、50件ほどの回答が集まっていました。「期日まであと2週間だけど、残り50件はどうやって集めるの?」と私が尋ねると、Hさんは「営業部門のベテランの庶務係の方一人ひとりにお願いして、周囲の営業担当者に声をかけてもらいます」と言いました。

 仕事を任せてから3週間後、また報告を求めると、67件の回答が集まっていました。つまりあと1週間で、30件以上の回答集めが必要なのです。私が「1週間で30件を集めるのは、大変だね」と言うと、Hさんは「67件も回答が集まったので、別に100件でなくても、集まった分を分析すれば十分ではないですか…」と妥協しかけ、自己正当化のための言い訳を始めました。

 私はそこで、Hさんを強く叱りました。「妥協しては絶対にダメだ。あなたはこの仕事の責任者だ。あと1週間も時間が残っているのに、当初の約束をどうして今諦めるんだ。自分の仕事にプライドはないのか。本当に、ほかにやり方はないの?」

 私の頭の中には、あと30件の回答をすぐに集める方法がありました。しかし答えがあっても、上司はそれを安易に教えてはいけません。その瞬間に仕事の当事者は部下ではなくなってしまうからです。あくまで仕事の当事者はHさんであり、本人が自分でやり方を考えなければ意味がないのです。

勇気を出して乗り越えた壁

 ただHさんの頭の中には、私が考えているのと同じ答えがあるはずでした。言い出せずに葛藤していたのです。私が叱ると、Hさんはついにその答えを口にしました。それは、営業部門の上司たちに直接頼み、部下にアンケートに回答するよう促してもらう方法です。

 Hさんがその方法に踏み出せなかったのは、自分が営業部門にいた時、上司から詰められた嫌な記憶が強く残っており、そのためにメンタル不調を抱えてしまったトラウマがあるからでしょう。営業部門の上司に依頼に行くのは、心理的なハードルが高い仕事だったのです。私は「なるほど。それはよい考えだね。やるかやらないかはあなた次第。来週の報告を待っているよ」と言いました。

 そして、1週間後。定例チームミーティングの場で彼に「アンケートの回答は?」と尋ねると、Hさんはすっと立ち上がり、晴れ晴れした顔で「102件集まりました!」と言ったのです。その瞬間、仕事ぶりを見守っていたチームの先輩たち全員が立ち上がり、スタンディングオベーションを贈りました。「よくやった」「頑張ったね」「大きな壁を乗り越えたね」。大騒ぎする会議室の様子を、外を通る人たちが何事かと覗きに来る始末でした。

 それからのHさんは、自信をみなぎらせて仕事に取り組むようになりました。その後もステップを刻みながらアンケートの再設計などに取り組み、本部長に企画と予算の承認を得て、いよいよ調査の収集・分析システムの運営が可能なところまでたどり着きました。

 しかし、仕事にはアクシデントがつきものです。リニューアルした調査の運用を始める段階になって、部の業績が厳しいためいったん投資は凍結することになったのです。するとHさんは本部長のところに乗り込み、「なぜ一度承認したものを途中でひっくり返すんですか、現場は望んでいるんですよ。約束が違うじゃないですか」と訴えたのです。

 私は、その果敢な後ろ姿を見ながら感極まりました。Hさんが、自分の仕事にプライドと責任を取り戻し、自分に自信を持てるまでになったことが、本当に嬉しかったからです。そして、「小さなキャリアの階段」をつくり、チーム皆で支えたことで、Hさんが大きく成長できたことを実感したのです。


【ご意見・ご感想をお寄せください】

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第7回

【STEP③】「協働意識」を醸成する《その2》
「お客様に役立っている」「善い仲間の一員だ」と感じさせる

【紙上講座(新聞掲載)】

「ありがとう」と言い合える組織づくり

 人は、「自分はお客さまに貢献できている」「社会の役に立っている」「自分の仕事が誰かの笑顔に繋がっている」と感じられるからこそ、仕事を頑張り続けることができます。まさに働きがいです。ただ現実には、部下が「自分が役立っている」と実感できる機会は、そう多くはありません。お客様はサービスに不満があると、ほぼ必ずクレームになりますが、わざわざ「ありがとう」とは伝えに来てくれないからです。

 そこで、「自分たちが役立っている」と感じられる場面を演出するのも、上司の大事な仕事になります。お客様や部下同士で「助かった」「ありがとう」という感謝の言葉が行き交うように、仕掛けを作るのです。やり方は非常にシンプル。朝礼や夕礼などのミーティングで、お客様からのクレームやミスの共有だけでなく、お客様に喜んでもらえた情報や、メンバーに感謝したエピソードなどを共有するコーナーを設けるのです。これは、週に10分でも効果があります。

 私が注目するある通販会社では、毎日の朝礼でお客様から「ありがとう」と言われたエピソードを共有しています。もともとクレームを受けやすい仕事ですが、「ありがとう」の共有等の取り組みでお互いに感謝し合うポジティブな組織風土ができていて、組織内にネガティブな空気は蔓延しません。

 人は「ありがとう」と言われると、それに「借り」を感じ、相手に「ありがとう」を返したくなります。心理学でいう「返報性の法則」です。部下同士が「ありがとう」と言い合える組織なら、プラスの連鎖が起きるのです。上司の皆さんには、この連鎖を起こすために組織の中で相互に感謝する風土が生まれる仕掛けを考え、実践することをお勧めします。


仲間意識を高めて仕事のタコツボ化を防ぐ

 一人ひとりの部下が仕事の目的と自分の役割を理解し、目標に向かって取り組む態勢が整っても、部下同士が互いの仕事の進捗や経過を共有しにくい状態では、仕事がタコツボ化しがちです。任せた仕事の当事者は部下自身とはいえ、チームワークを保てなければ組織成果は上がりません。そこで、上司にはチームの仲間意識を高め、情報交換や報告・連絡・相談を促すことが求められます。これは、ファシリテーションと呼ばれる技術です。

 上司の皆さんは、会議で参加者全員に発言を促し、参加意識の醸成と話し合いの活性化に気を配りましょう。上司の発言に対し、部下一人ひとりがどう考えているか質問し、さらに部下同士の意見交換に導くこともよいでしょう。また、一人で悩んでいそうな部下がいたり、チーム内や部署間で連携すべき課題が見えたら、関係を取り結ぶ介入も必要です。部下たちに、持ち回りで会議の司会役を任せるのも効果的でしょう。上司だけが仕切るより、互いに発言や質問がしやすい雰囲気になりやすく、司会役の当事者意識も高まります。

 このように、上司は部下の自律性の促進と同時に、仕事のタコツボ化を防ぎ、「仲間と共に善い目的実現に向けて働いているのだ」という意識を高めることが大切なのです。これは、組織エンゲージメントの向上と呼ばれるものです。


非公式なコミュニケーションの活性化を促す

 また、公式な会議や打ち合わせだけでは、どうしても必要最小限の業務上の情報交換に終始しがちです。効率的な会議も大切ですが、業務上の対話だけでは部下同士の相互理解を図るには限界があります。

 そこでぜひ取り入れたいのが、チームでの非公式なコミュニケーションの活性化です。このように言うと、飲み会やランチ会の開催かと思いがちですが、仕事時間中にうまく組み込む方法もあります。私が営む会社での実際例を紹介しましょう。

■「チェックイン」

 ホテルや空港の窓口で行うチェックインに因んだ名称です。会議や研修の開始時に、参加者同士がリラックスして話せる関係へと導く方法です。具体的には、ミーティング冒頭の本題に入る前に、次のようなテーマで各メンバーに全員への自己紹介を促します。

【チェックインのテーマ例】

・「この週末の出来事は?」

・「最近、気になったり、印象に残ったことは?」

・「ニュースや報道で、共感したり、考えさせられたこと」

・「マイブームは(最近、はまっていることや趣味など)」

・「最近、人に感謝したり、幸せを感じたエピソード」など

 コロナ禍の現在、リモートワークが常態化しコミュニケーションが希薄になりがちなので、毎週月曜のスケジュール確認と相談のためのミーティングの冒頭で行っています。部下一人ひとりの個性や人柄が現れ、趣味・趣向などから意外な側面が発見でき、相互理解に役立ちます。また、共通の関心事がみつかれば、その後の親睦にもつながります。

■「みんなの読書」(通称「みん読」)

 各自が、最近読んだ本を皆に紹介するコーナーです。月に2回開催する定例会議の一番最後に行っています。本のジャンルは何でもよく、仕事関係のビジネス書・学術書から、趣味の本、小説、雑誌、漫画でもOKです。これにも一人ひとりの個性が出て、互いの考え方や感じ方を知ることができる、とてもよい機会です。また、自分が関心がなかった多彩な分野の知識や情報が得られる点でも、とても有意義です。

 取り上げた本の良し悪しや、発表の出来栄えを競うのが目的ではなく、お互いが楽しめることが大事です。「この本の、ここがサイコーに良かった!」「私も読んでみたい!」と、盛り上がることが第一。あくまでも仲間をよく知り、関心を持ち合うことが大切なのです。

【 解説 】

組織のなかで、帰属と承認の欲求を満たし合う

小さな力を合わせて「おおきなかぶ」を抜く醍醐味

 私は、組織について考えるとき、いつも『おおきなかぶ』という絵本を紹介します。この絵本では、おじいさん、おばあさん、孫娘が次々に登場し、全員がかぶを抜こうと試みますがなかなか抜けません。犬が手伝っても、猫が手伝っても抜けずにいたところ、最後にネズミが出てきて全員が力を合わせたら見事に抜けた……というお話です。

 絵本に登場するのが、おじいさん、おばあさんからネズミまで、力の弱い人や動物ばかりなのがミソです。一人ひとりの力は弱くても、みんなが力を合わせることで「おおきなかぶ」が抜けることをこの絵本は伝えています。これこそ、チームで働くことの醍醐味を表しています。

 経営学者ピーター・ドラッカーは、「組織とは、平凡をして非凡なさしめるもの」と言っています。会社組織は飛び抜けたスーパーマンはいないもので、基本的に「普通の人たち」で構成されています。その「普通の人たち」が共通の目的のために協力することで、非凡な成果をあげることが可能になります。そして、非凡な成果をあげられるようにチームをまとめるのが、「上司力」なのです。

「あなただから」が部下の欲求を満たす

心理学者エイブラハム・マズローによる「欲求五段階論」を聞かれたことがあると思います。マズローは、人間の欲求は5段階の階層をなしていると説明しています【図参照】。下から順に見ていくと、

①生理欲求……食べたい、飲みたい、眠りたいといった最も基本的な欲求

②安全欲求……自分の生命や財産などを安全で安定した状態に置きたいという欲求

③社会(帰属)欲求……仲間に入れてもらいたい、愛されたいという欲求

④承認欲求……他人から尊敬されたい、自分を価値ある存在だと認められたいという欲求

⑤自己実現欲求……自分の持って生まれた能力を最大限に伸ばし、発揮したいという欲求



 とされており、上位の欲求は、下位の欲求がある程度満たされて初めて呼び起こされるものとされています。みなさんの部下は会社に勤めて職を持っていることから、「生理欲求」「安全欲求」は満たされていると考えられます。そこで次の段階で生じるのが「社会(帰属)欲求」、そして「承認欲求」です。会社のなかでこれらが満たされることで、部下は充足感を得られると考えられます。

 「社会(帰属)欲求」は、部下が組織の目的を理解・共感し、その目的に向かうチームの一員であると感じることによって、満たすことができます。

 昨今、クラウドファンディングなどを通じて寄付をし、自分が共感する活動を応援する行動が盛んです。これはクラウドファンディングを通じて「自分が素晴らしい組織や活動に帰属し、一緒に貢献できている」と感じられるからだと言えるでしょう。

 「承認欲求」は、組織の中での自分の役割を理解・納得し、上司や同僚、お客様などからのフィードバックから「自分だからこの役割を担っている」と感じることで満たされます。「自分だからこそ」の役割を持つということは、そのまま自分の尊厳が認められている実感につながるのです。

ただし、「褒め過ぎ」に注意!

 「承認欲求」を満たすことは、「部下を褒めること」ともつながります。褒めることは、近年、多くの企業で奨励されるようになっています。民間の検定が設けられるほどで、多くのベテランマネジメント層の方たちが、「とにかく部下を褒めなければ」と躍起になっている場合もあります。

 ただし、私は褒めすぎにも注意しなければならないと考えています。組織学者・経営学者である同志社大学の太田肇教授は、その著書『「承認欲求」の呪縛』(新潮新書)で、現代人が承認欲求に縛られて身動きがとれなくなっていることを指摘しています。

 考えさせられるのは、同書の中で取り上げられたある病院の事例です。その病院では、看護師など医療従事者が常に売り手市場傾向で離職率が高い課題に対して、ある策を練りました。病院の経営効率向上と給与アップが難しいなか、医療従事者をもっと褒めようと、「最優秀職員賞」を設け、定期的に表彰する取り組みを行ったのです。

 ところが蓋を開けると、この賞を受賞した人の方が比較的短い期間で辞めていくという現象が起きていたのです。その理由を追跡してわかったのは、褒められて表彰されることで「次はもっとがんばらねば」と言うプレッシャーを感じ、それに耐えられず辞めていく人が多い事実でした。表彰されるほどの人は、責任感も強かったのでしょう。「表彰を受けたにもかかわらず、これ以上はもう頑張れない」と感じ、辞めてしまっていたのです。この事例からも、褒めることの難しさがわかります。

 部下を褒める際には、過渡な褒め方で過大な期待をかけてしまうと、プレッシャーでつぶれてしまう恐れもあります。具体的な成果や工夫を認め、褒めることを大切にしながらも、一人ひとりの状態や気持ちをよく考え、適度な励ましになるよう、配慮することも必要なのです。


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第6回

【STEP③】「協働意識」を醸成する《その1》
部下一人ひとりの役割と組織目的を結びつける

【紙上講座(新聞掲載)】

組織づくりの第一歩は「ダイバーシティ(多様性)」の理解から

 企業の上司層にマネジメント上の悩みを訊ねると、「部下が指示待ちで困る」「自分で考えて動いてくれない」などと並んで、「部下と部下の連携がうまくいかない」「部下同士の仲が悪い」との声が目立ちます。その悩みの背景には「組織は自然に動くもの」との考えがあるように感じます。

 しかし実際には、組織に集うメンバーが足並みを揃えて前に進み成果を出すためには、上司による仕掛けが必要です。組織の共通の目的のもとに、部下が互いの役割を認識し合い、いかに連携を取るべきか。上司が理解を促す役割を果たさなければ、組織はうまく機能しないのです。

 その際の大前提として上司の皆さんに重視してほしいのは、「職場のダイバーシティ(多様性)」の理解です。「それはグローバル企業の話で、自分たちには無縁」と考えるのは早計です。ダイバーシティは今やすべての日本企業の課題であり、その本質を理解せずして組織づくりはできません。

 昭和に原型ができた日本型組織は、男性正社員中心の「ピラミッド型」でした。これは、戦後の高度経済成長期に定着してきた男女の役割分業を基礎に作られたものです。男性は会社で猛烈に働き、女性は結婚したら家庭に入り家を守るのが一般的。上司も部下も男性で、「上司は年上、部下は年下」が当たり前でした。

 しかし平成から令和へと時代が移り変わる中、このような状況はもはや過去のものです。今日の職場でダイバーシティが重視される背景と諸相については、本コラムの第1回(ホームページ版解説)で解説しており、詳細は繰り返しません。要約すれば、年齢、性別、国籍や文化などの違い、育児や家族介護の有無、雇用形態の違いなど、異なる立場や価値観を持つ多様なメンバーがいる職場が当たり前であり、共に認め合い活躍できる組織づくりが不可欠なのです。


「ピラミッド型組織」から「サークル型組織」へ〜上司は「役割」~

 今の上司の皆さんが若手であった頃のピラミッド型組織では、「四の五の言わず、黙って自分の務めを果たせ!」と強権を発動すれば、上司は部下を動かせたかもしれません。終身雇用と年功序列のもと、「我慢して指示・命令に応えていれば、いずれは出世し給料が上がる」という、「ポスト」と「報酬」による動機づけが機能していたからです。しかし多様な立場や価値観のメンバーが集まる現代の組織では、このマネジメント手法は通用しません。

 さらに、新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに、世の中はいっそう不透明感を増しています。先が読めない不安の中、将来のポストや報酬などの「鼻先にニンジンをぶら下げる」動機づけは、全ての部下に保証もできません。今の上司の皆さんは、先輩世代のマネジメント手法をそのまま踏襲しても、組織を動かすことはできないのです。

 そこで、今の時代に大切になるのが、「組織の目的」と「個々の尊重」による動機づけです。そのためには、組織の目的を中心に置き、その実現のために多様な部下一人ひとりが主体的に重要な役割を果たす「サークル型組織」をつくることが必要なのです(【図】参照)

 組織がサークル型であるからには、上司と部下は上下関係ではないと考えることが第一です。ピラミッド型の組織では上意下達を前提にしていましたが、サークル型組織はフラットな関係です。上司も部下も人として対等であり、それぞれの役割を分担していると考えましょう。具体的には、上司は「経営層とのパイプ役」「チーム全体を束ね動かす」という役割を担うのです。部下は一定領域の仕事を分担し、自分の持ち味を活かして責任を果たす役割を担います。

 すなわち、上司は「偉い」のではなく、あくまでチームの円滑な運営のための一つの「役割」です。決して自分はピラミッドの頂点に立つ者ではないと認識しましょう。


「組織づくり」への采配の如何が上司力を左右する

 その上で、上司の役割としての「組織のつくり方」を考えます。冒頭でも述べたように、組織に集うだけで、部下たちが自然と連携して動いてくれることはありません。まず上司が組織の目的を明確に示し、その目的に部下が共感して動機づけされることが必要です。

 そして、一人ひとりに組織の目的達成を目指すための重要な役割を割り振り、「あなたの持ち味を活かして、組織の目的達成のためにこの仕事を任せたい」と伝えることが大切です。こうして「組織の目的」と「個人の役割」をしっかりつなげ、組織の全体像を部下たちに見せて「全員が組織の目的実現に向けて重要な役割を担い合っている」と納得してもらうのです。そうすることで初めて、組織は機能し始めるのです。これこそが、上司の役割としての「組織づくり」です。

 サークル型組織の説明の際に、「組織の目的を中心に置く」と述べました。しかし、これは単に理念として会社の壁に掲示したり、メンバーに唱和させれば浸透するものではありません。

 会社の最上位の組織目的である経営理念にせよ、その下での自分たちの組織の目的にせよ、いくら経営者や上司が口酸っぱく繰り返しても部下は動きません。「それを、いかに達成するのか」「自分は達成のために何ができるか」がイメージできなければ、雲の上の話に終わってしまいます。部下たちが「自分の仕事・役割が組織の目的実現にどう関わっているのか」をしっかり腹落ちできてはじめて、組織の目的は部下にとって現実味を持つのです。

【 解説 】

部下一人ひとりの強みを活かす組織図づくり

 今回の連載では、多様な部下たちの「協働意識」を醸成するための組織づくりの第一歩として、部下一人ひとりの役割と組織目的をしっかり結びつけることの大切さを述べました。そこで、これを「組織図」に落とし込み、可視化する方法をお伝えします。

組織の中での部下一人ひとりの役割の位置づけを明示する

 本連載の第2回(ホームページ版「解説」)では「メンバー育成計画シート」を取り上げ、第3回(ホームページ版「解説」)では「任用面談シート」を取り上げました。これらのシートを用い、上司と部下が面談のプロセスを通して、部下に任せたい役割を明らかにするステップを紹介しました。

 そこで、以上の作業を踏まえた次のステップとして、上司と部下が共有した部下の役割が、さらに組織のなかでどのような位置づけになるかを図示し、本人と組織全体で共有する方法を見ていきましょう。

 以下に例示した「中堅広告代理店 営業組織の仮想例」を参照してください。このような遊び心ある組織図を作成し、共有することも効果的です。ここでは、組織全体に部下一人ひとりを位置づける意義とポイントを確認します。



 「仮想例」の中の面談相手の部下は、営業第二課の11年目の中堅社員の渡部さん(仮称)とします。今期、東部エリア担当の営業主任として抜擢し、本人も受諾しました。面談で上司からは、これまでの本人の活躍と希望を踏まえ、近い将来には営業第二課全体でのリーダーシップの発揮を期待すると伝えました。併せて、次の上半期は全員で「お客様の販売30%UPで、売上目標30%UPを達成しよう」との組織目標も共有したところです。

「あなたならでは」の活躍に期待し、動機づける

そこで、新たなリーダーの渡部さんには、「あなたならでは」の役割を担ってもらいたいと強調するのです。渡辺さんは、コツコツと顧客本位の提案営業を積み重ねてきたことで、お客様からの信頼が厚く、社内でも定評があります。また上司や後輩との報連相も丁寧で頼りにされる存在です。そうした自他共に認める「信頼関係作りのプロ」としての強みを今後も十分に発揮して、渡部さんらしいリーダーシップで組織に貢献し、大きく成長してほしい。そのことを本人に伝えると同時に組織図にも明記し、全体で共有するのです。

 こうして、部下一人ひとりの仕事を組織全体の中に位置づけると同時に、本人のキャリア希望にもつながる仕事として動機づけるのです。こうして、部下一人ひとりの活躍・成長と組織の成長が繋がっていくのです。


【ご意見・ご感想をお寄せください】

 上司である皆さんが、日々職場で実感しているマネジメントの課題(部下育成上の困難や悩み)は何ですか? 「ご意見・ご感想」送信フォームから、本連載へのご感想と併せてお寄せください。今後の企画・執筆の参考にさせていただきます。

第5回

【STEP②】「動機形成」を図る《その2》
わかりやすい「話し方」で
部下のやる気を高める内発的動機づけ

【紙上講座(新聞掲載)】

もはや通用しない「アメとムチ」

 上司の皆さんの多くは、部下にやる気を高めて働いてほしいと願っていることでしょう。しかし、やる気ばかりは、上司が部下に命じて出させることはできません。部下の心の内側からやる気を湧き上がらせるには、人の心の構造を理解しておくことが必要です。

 動機づけには、「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」があるとされています。外発的動機づけとは文字通り「外から」働くもので、いわば「アメとムチ」です。社員が「会社から評価され昇進したい」「より高い給料が欲しい」「命令に従わないと不利になる」といったものです。会社が営業目標を設定し、評価を引き合いに部下に達成を迫る方法も、外発的動機づけの一つです。会社におけるマネジメントでは、これまで往々にしてこの外発的動機づけを多用しがちでした。「給料分は働いて当然」とばかりに尻を叩き説得しながら、何とか「やる気」にさせようとしてきました。

 40代以上の上司の皆さん自身は「仕事とは、そういうもの」と思い、会社の説得に応じてきた世代かもしれません。しかし時代は変わり、若者を中心に「会社の命令は絶対」「従っておけば安心」とは考えないようになってきました。役職定年や定年後の再雇用で嘱託となったシニア社員には、そもそも高い給料や昇進を提供することは難しいですし、育児や介護を抱える両立社員も、昇進や昇給で動機づけしにくくなっています。そう。終身雇用と年功序列が崩れつつある今、部下への外発的動機づけが効きにくくなっているのです。


大切なのは内発的動機づけ

 そこで上司に必要となるのは、部下を内発的に動機づけることです。モチベーション研究の大家であるアメリカの心理学者エドワード・Ⅼ・デシは、内発的動機づけには二つの因子が必要だとします。一つは、自分の「有能さ」の感覚、つまり「自分にはできる」と有能感を持つこと。そしてもう一つは「自己統制」、つまり「自分でコントロールできる」「自分に裁量がある」ということです。

 有能感を与えるには、部下に仕事を分担する際に、部下の能力をよく見極め、「少し頑張れば達成できる仕事」を任せます。また、自己統制については、本人が自己裁量で「工夫できる余地」を残した状態で仕事を任せることです。任せた以上は、部下自身が仕事の当事者であり主人公です。上司は「管理職」ではなく、「支援職」としての役割に撤しましょう。

 こうして内発的動機づけが整えば、部下は徐々に「やる気」をみなぎらせてくれるはずです。


「思い」と「思いやり」と「わかりやすさ」で語る

 以上の点を踏まえながら、次に上司は部下への動機づけに際し、どのように話しかけるべきかに留意しましょう。いくら動機づけの大切さを心得ていても、上司の話し方が稚拙であれば、部下に仕事の目的を腹落ちさせることも、やる気を沸き立たせることもできません。現代の上司には、部下に伝わる話し方をすることが必須なのです。

 部下に伝わる話し方には、「思い」と「思いやり」と「わかりやすさ」の3つの要素があると、私は考えています。

 第一の「思い」とは、上司自身が組織運営や部下育成や活躍支援に対し、「このような確たる思いを持っている」という主体性です。「私はこう考える」「私はこうして欲しい」と、「私」を主語にして話せるかどうかです。「会社の方針だから」といった伝書鳩のような言い方や、「とにかく、こうするように!」という問答無用の話し方では、部下は心底から納得してくれません。また、「これで取りあえずいいかな…」「こうでないと、まずいだろう…」など他人事の話し方でも、部下は上司の「思い」を感じ取れません。部下の心を動かすには、自分自身の言葉で語ることが欠かせないのです。


思いやりのベースは愛他主義

 第二の、「思いやり」とは、部下やお客さまに対して持つ思いやりです。最近注目されている、クラウドファンディングという寄付募集の場面を想像してみてください。「自分が得するために」というのでは、人の共感は得られません。一方、「困っている誰かのために」「社会の問題解決のために」との訴えなら共感や感銘を得やすく、寄付も集まります。

 このベースになるのは、本講座の第3回で触れた「愛他主義」です。損得抜きの愛情、慈しみですね。部下に話をするときは、「なぜなら、あなたにこうなって欲しいから」「お客さまには、こんな価値を差し上げたいから」と話します。また相手への配慮として、「私もこのようにサポートする」「困れば、いつでも相談に乗る」「どうしても難しければ、一緒に別の方法を考えよう」などの言葉を添えて伝えます。「他者への思いやり」は、人を動かす立場の上司が必ず持っておくべきもの。職位によらない影響力であり、リーダーシップの真の源泉です。


PREP法でストーリーを語る

 第三の「わかりやすさ」は、話し方の構成や流れです。

 どんなに良い内容の話でも、わかりやすくなければ伝わりにくいものです。ことに上司には、言葉で部下を動かすことが求められますから、わかりやすい話し方は必須のスキルです。その基本は、起承転結を意識してストーリー性を持って伝えることです。あれもこれもと内容を詰め込みすぎず、話があちこちに飛んだりすることなく、伝えたい内容を簡潔に整理して語ることです。

 使いやすい方法として私がお薦めするのが、「PREP法」です。これは、①P=Point(結論)、②R=Reason(理由)、③E=Example(事例、具体例)、④P=Point(結論を繰り返す)の順番で、相手にメッセージを伝えるものです。例示してみましょう。

 ①P=Point(結論)「○○さんの、この改善提案は、とても素晴らしいですね!」/②R=Reason(理由)「なぜなら、お客様にも社員たちにも、とてもプラスになるからです。」/③E=Example(事例、具体例)「先日も、あるお客様が仕事の効率が数倍アップしたと喜んでおられましたし、社員たちにとっては今までより安全に取り組めると高評価です。」/④P=Point(結論を繰り返す)「ですから、この改善提案は、とても素晴らしいと思います!」

 上司の皆さんは、ミーティングなどで部下に対し、仕事の成果を評価したり、新たな方針を説明する機会が多々あることでしょう。そうした場面で、PREP法で話を組み立て語ってみてはいかがでしょうか。

【 解説 】

自己効力感の育て方

 連載の第4回(前回)と第5回(今回)では、部下の動機形成の大切さと、その効果的な方法を解説しました。留意しておきたいことは、人は自分が仕事をするうえで、やりきる自信が持てるかどうかで、行動の選択や態度、積極性などが変わってくることです。

 そこで、ここに深くかかわる心理概念として、カナダ出身の心理学者アルバート・バンデューラが提唱した自己効力感を紹介しましょう。

自己効力感とは

 自己効力感(self-efficacy)とは、人がものごとに取り組む時に「自分にはそれができる」「必ずできるはずだ」という自信の感覚、信念のことです。

 バンデューラによれば、自己効力感の強い人は、仕事を成就することやウエルビーイング(幸せ)の追求を自ら強化できます。困難な仕事を、避けるべき脅威ではなく習得すべき挑戦と受け止めて取り組む傾向があります。この行動は、さまざまな活動への興味関心と深く没頭する姿勢から生まれます。自分自身で挑戦すべき目標を設定し、目標達成に強いコミットメントを持ち続け、困難に直面してもコントロール可能だと信じ、より努力し、行動し続けます。失敗や逆戻りをしても、原因は自身の努力不足や知識・技術不足であるために補いうると考え、素早く立ち直ります。これらの行動は、目標達成を容易にし、ストレスや抑うつなど精神的な脆さも低減するとしています。

自己効力感を育てる4つの要素

 バンデューラは、自己効力感を育てるための4つの要素を挙げています。

(1)制御体験

 自分自身の力による成功体験です。これには、これまで鍛えてきた力以上の、より大きな環境変化を制御できる新たな力の獲得が必要だとします。忍耐強い努力や工夫で障害に打ち勝つ体験を経て、困難やつまずきに負けない力や、厳しさに耐え逆境から立ち上がれる力を得て、強固な自己効力感を獲得できるとしています。

(2)代理体験

 社会的モデル(ロールモデル)によって与えられる代理体験を通しても、自己効力感を高められるとします。自分と近しい人が忍耐強く努力する姿を見ることで、自分にも同様の行動ができるという信念が湧きあがります。自分が熱望する能力を持つモデルを見出し、その思考や行動から学ぶことが、自己効力感を得るには効果的なのです。

(3)社会的説得

 他者に能力を認められ積極的行動を勧められた人は、その行動により多くの力を投入し続けます。自己効力感が上昇することでますます成功への努力と工夫を重ね、成長を加速させます。そのうちに他者からの評価に振り回されずに行動するようになっていきます。他者との比較ではなく、自分自身を改善・向上させる視点で自己評価と努力が可能になっていくのです。

(4)生理的・感情的状態(の向上)

 自己効力感を高めるには、身体の状態を向上させ、ストレスやネガティブな感情を減少させて、身体の状態を正しく保つことが大切です。人は自分の能力を判断する時に、生理的・感情的状態に左右されます。ストレス反応や緊張、疲労や痛みや苦痛などは遂行能力の衰弱のサインと感じます。自己効力感は肯定的な気分で強まり、落胆した気分で低下するのです。

部下の支援・育成に活かすポイント

 部下の支援・育成を通して自己効力感を育てるには、上記項目に沿った次のポイントに留意するとよいでしょう。

①上司の支援のもとに、着実な成功体験を積ませる

②先輩や上司の中からロールモデルを定めて、見習い学習をさせる

③プレッシャーにならない範囲で、本人の強みや持ち味をほめて伸ばす

④心身の健康に注意し、ストレスを軽減して肯定的気分を持たせる


【参考文献】「激動社会の中の自己効力」

編著:アルバート・バンデューラ/監訳者:本明寛、野口京子

出版社:金子書房/発行日:1997年11月10日


【ご意見・ご感想をお寄せください】

 上司である皆さんが、日々職場で実感しているマネジメントの課題(部下育成上の困難や悩み)は何ですか? 「ご意見・ご感想」送信フォームから、本連載へのご感想と併せてお寄せください。今後の企画・執筆の参考にさせていただきます。

第4回

【STEP②】「動機形成」を図る《その1》
「働く目的」を共有し、役割へと動機づける

【紙上講座(新聞掲載)】

「働く目的」を共有する

 上司力を発揮する支援型マネジメントの第2ステップは、部下と「働く目的」を共有し、仕事へのモチベーションを高めることです。

 上司は往々にして、部下に対し「作業」の指示をしがちです。特に多忙なプレイングマネジャーで、自分自身が優秀なプレイヤーだった上司ほど、部下に「あれをやって」「これをやって」と指示を飛ばし、効率的に仕事を進めようとします。何とかチームの業務を完遂し業績を上げようと、一所懸命であることは確かでしょう。しかし、「とにかく、自分の指示どおりにやってくれればいい」とのメッセージが強まるほど、部下のモチベーションは下がっていきます。指示されたことをロボットのように処理するだけの状態に陥ってしまうからです。

 部下が自ら仕事にモチベーションを高く持って取り組めるようにするためには、「働く目的」をしっかりと理解させ、納得してもらうことが大切なのです。

 本来、仕事には必ず目的があります。しかし、上司が部下に仕事の目的を伝えず作業を指示するばかりだと、部下にはその目的が理解できません。そして、目的がわからない作業に意義を感じることは難しく、「自分は何のために、こんな作業をやらされているのか?」と疑問を抱くことになるのです。

 また、このマイナス感情は、チーム内で連鎖しやすいものです。一人の部下のモチベーション低下が他の部下に伝播し始めると、チーム全体の雰囲気が停滞し、そのうち業績の低下に結び付きかねません。仕事の「目的」を伝え共有することは、部下のモチベーションを高め、チーム全体のパフォーマンスを向上させる上で不可欠なステップだと心得ましょう。


「目的」と「目標」の違いを押さえる

 ここで上司がしっかり踏まえておくべきは、「目的」と「目標」の違いです。上司力研修の受講管理者に「あなたのチームの目的は何ですか?」と尋ねると、「今期○○円の売り上げ目標の達成です!」「事故や誤配の数を減らすことです!」といった答えがよく返ってきます。しかし、この「売り上げ目標」や「品質目標」は「仕事の目的」ではありません。

 目的と言うのは文字通り「目指す的」であり、「仕事の目的」とは日々の仕事の先にあるゴールイメージです。すなわち、「日々の課題や困難を乗り越えた先に、どんな世界にたどり着きたいのか」が「仕事の目的」なのです。

 一方の「目標」は、これも文字通り「目的に至る途中にある道標(目印)」です。チームが目指す世界を実現するには、「どれだけ売り上げるか(売上目標)」、「いつまでに仕上げるか(納期目標)」、「どの水準のクオリティを実現するか(品質目標)」といった目印が必要です。こうした目標を目的に向かう道程の途中途中に置き、それを一つずつクリアしていくことで目的に近づいていくのです。

 また、目標は「会社(組織)の内側」に置くものであるのに対し、目的は「会社(組織)の外側」に置くもの、とも言えます。会社の究極の目的は、その存在意義である経営理念や中長期の経営ビジョンの実現であり、社会(会社の外側)にどのような貢献を果たすかです。P.ドラッカーも、「企業の目的は顧客の創造である」としています。組織としてその持続可能性を高めるために、会社の内側の売り上げや利益などの経営目標を立てているに過ぎないのです。つまり、目的が上位概念で目標が下位概念であり、目的があるからこそ目標が意味を持つのです。

 これは、各部署単位でも同様です。チームの外側に貢献するために存在しているわけですから、上司が「売り上げ目標を達成しよう」「納期を守ろう」など、部下に内側の目標ばかりを示し発破をかけても、部下のモチベーションは高まりません。ただ、目標は人事評価や給与などにも直結しやすいので、部下は渋々従ってくれるだけということになりかねません。部下を「よし、ぜひやろう!」「善い仕事に仕上げよう!」と前向きにさせるには、目標の指示だけでなく「仕事の目的」の共有が不可欠なのです。


チームの目的と本人の役割に動機づける

 部下と共有すべき仕事の目的は、2つあります。一つは「チーム全体の目的」です。共に働く仲間たちが力を合わせることで、どのような世界をつくろうと思い描いているかです。そこに共感し、ワクワクできれば、部下は自分がチームの一員であることに誇りを感じ、帰属欲求を満たすこともできるのです。

 もう一つは「個人の目的」です。部下一人ひとりに任せる役割が本人ならではの持ち味を活かせるものであり、それを全うすることで、どう活躍・成長できる人材になれるかです。部下の仕事がチーム全体の仕事にどう紐付いているのかを理解させて、人材育成をも果たすわけです。「自分はチームの目的実現に貢献でき、存在が認められている」という承認欲求を満たすことにもつながるでしょう。


チームの目的を言語化する

 上司はチームを預かると、まず部下と共有すべき「チームの目的」を明確にしておかなければいけません。「そうあらためて問われてみると、自分のチームの目的っていったい何だろう?」と思う上司の方も多いでしょう。その場合には、あらためてチームの目的を考え抜き、言語化することから取り組みましょう。

 チームの目的は、チームビジョンといえます。これを明らかにするには、次の5つのステップで考えるとよいでしょう。


  • ①チームにとっての「お客さま」は誰か?
  • ②その「お客さま」の課題(ニーズ)は何か?
  • ③自分のチームには、どのような強みがあるのか?
  • ④その強みを活かし「お客さま」の課題を解決するには、どんなアクション(行動)が相応しいのか?
  • ⑤チームのアクションによって、「お客さま」にどのような価値を提供するのか?

 チームの「お客さま」は誰か。これは、業務の第一線の窓口や配送や営業などの部署であれば、一目瞭然でしょう。一方、人事や総務などの間接部門なら、「お客さま」は自社の社員となるでしょう。自分のチームが貢献する対象は誰かを考えることで、「お客さま」は明確になります。チームの仕事は、その「お客さま」の「困っている課題」を解決すること。「お役に立つ」ことなのです。

 「お客さま」の課題解決に貢献するために、自分のチームはどんな持ち味を活かし、どう行動するか。そして最終的にどのような価値を提供するのか。このステップを順に言語化することで、必ずチームの目的はクリアになるはずです。

【 解説 】

部下の仕事の目的と目標を具体化する
「任用(動機づけ)面談」のすすめ

 連載第4回では、上司力を発揮する支援型マネジメントを進めるための【STEP②】『「動機形成」を図る』の《その1》として、部下と「働く目的」を共有することの大切さを述べました。そこで、以下では、これを部下一人ひとりの今期の具体的な役割(ミッション)に落とし込み、さらに部下自身が意志目標とその実現のプロセスを自律的に定めていく方法を紹介しましょう。

 本連載の第2回で、部下への理解を深める「傾聴面談」のための「メンバー育成計画シート」を紹介しました。このシートを用いた面談を通して、部下本人の社歴、将来希望、強みと弱みなどを踏まえた、上司からの「将来への期待」を示し、部下と共有しました。(必要に応じて、連載第2回を再度参照し、確認してください。)

 そこで、これを踏まえて、私が開発した「任用面談シート」(掲載図参照)*をもとに、部下の今期(半年間を想定)のミッションを定め運用するための、より具体的な手順を押さえていきましょう。



部下の「今期のミッション」を定める

 シート中段の「今期のミッション」の赤字項目は、部下に任せる役割であり、チームの目的を果たすための仕事の目的です。まず、上司は部下に任せる仕事を具体化し動機づけする面談(任用面談)に先立ち、「任用面談シート」に事前記入を行います。部下と行った期初面談の結果を振り返りながら、その際に用いた「メンバー育成計画シート」の記入内容で変更がないものはそのまま転記し、面談の結果修正を要する点は整理して記入します。シート記入例の黒字部分が該当します。

 シート中段、「今期のミッション」(記入例の赤字と青字の欄)が、任用面談のメイン部分です。上司は部下への依頼事項として、赤字部分を以下の要領で検討し、記入します。

  • ➤「優先順位順」の枠…今期6か月間に部下に取り組んでほしいミッション=より具体的な業務項目を記入
  • ➤「シェア」の枠…本人の仕事全体の中での、各ミッションの重みづけ(部下が力を割く割合)。合計100%で記入。

 上司はここまで記入し、青字部分は空欄のまま残します。

 このシートへの記入のポイントは、部下との期初面談の結果を十分に踏まえながら、次の任用面談で部下を前向きに動機づけできる内容に仕上げることです。部下本人の将来へのキャリア希望と上司の期待を土台に、本人の強みを活かし弱みを補強する視点を加味しながら、「任せたい役割・仕事」の領域で本人に力を発揮してもらうに相応しい業務として「今期のミッション」を書き込みます。

本人の「役割・仕事」を再確認し動機づける

 以上の準備が整ったら、任用面談を実施します。面談では、シートを部下にも共有し、対話を通して「今期のミッション」を具体化します。以下、シートに記した、ある企業の営業職の記入例に添いながら、手順とポイントを説明します。

 面談では、まず上司がシートの記入内容を部下に説明します。期初面談での共有事項(黒字部分)は再確認部分ではありますが、先の面談での対話も振り返りながら、本人の胸に落ちるストーリーとしてしっかり伝えましょう。

 記入例の田中一郎主任の場合は、本人がコンサルティング営業の職場風土づくりへの貢献を通してキャリアを磨きたいと希望しています。これに対し、上司は田中主任の法人営業の実績に加え、高いコミュニケーション力を評価していること。その強みを活かし、他部署との連携強化も図れるリーダーに成長してほしいこと。そこで、今回の主任昇進を機に、まず「営業グループの新規開拓リーダー」として、理想の職場づくりに向け率先垂範で力を発揮してほしいこと。その際、本人の課題である仕事の正確さや緻密さの向上を意識して取り組んでほしく、上司もOJTで支援すること、などを語ります。部下が、任された自分の役割・仕事の意義と概要を再確認でき、具体的なイメージをつかめることが大切です。

「今期のミッション」の意味と期待を示す

 次に、上司が定めた「今期のミッション」の「優先順位」と「シェア」の欄(記入例の赤字部分)を説明します。

 記入例の田中主任の今期の役割として最も重責なのは、既に実績のある法人営業で、「新規営業のトップランナー」としてさらに業績を上げ、チームのけん引役・ロールモデルになることです。そこで、本人の50%の力を期待します。

 次いで、チーム全体のコンサル営業力の強化は本人の希望でもあり、チームリーダーである主任の本務です。そこで、この「自チームのコンサルティング営業力の底上げ」へのリーダーシップの発揮に期待し、シェア30%で取り組んでもらいます。

 さらに、コロナ禍の影響で喫緊のチーム課題でもある「非対面型営業の仕組みづくり」も20%のウエイトで任せます。優れた営業力から新しいノウハウを生み出し、この課題をクリアしてほしいという趣旨です。

 ミッションの説明に際しては、これまでの本人の行動や成果で評価している点や、今後期待する姿をできるだけ具体的に述べます。また、チームの課題点や今後めざしたい方向など、職場全体の課題感も伝えます。部下の仕事の進め方など細部に介入するのは避けつつも、上司が部下の各ミッションに込めた期待の理解にズレが生じないよう、しっかり伝えましょう。

部下自身に期間目標を提案させ、承認する

以上の上司からのメッセージを踏まえ、シートの記入例の青字部分の意志目標とプロセスは部下自身に考えさせます。一度部下にシートを持ち帰らせ、よく練って記入させる方法と、面談で対話を続けながら一緒に記入していく方法があります。新入社員など自力での目標の具体化が難しい場合は、面談で一緒に立案するのが現実的です。こうして出来上がった部下自身の意志目標とプロセスを、上司は尊重しつつ、必要なアドバイスや調整を加えながら、承認していきます。

以上のように、「任用面談シート」を用いた動機づけ面談を行うことで、チームの目的に紐づけた本人の仕事の目的を具体的に共有し、部下自身が仕事の目標と計画を立てられるようにすることが望まれます。

ぜひ皆さんの職場でも、このシートや面談の手法や考え方を参考に、部下への動機づけを工夫し、実行に移してください。


【ご意見・ご感想をお寄せください】

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第3回

【STEP①】「相互理解」を深める《その2》
上司力のベースに「愛他主義」を置く

【紙上講座(新聞掲載)】

心理的安全性を醸成しよう

 部下との信頼関係や、活躍できる職場づくりで留意したいのが、「心理的安全性」です。部下が自分の力をいかんなく発揮して働くためには、職場が安心・安全な場所であることが重要です。職場はいつでも自分を迎え入れてくれる「ホーム」であり、「本音や弱みを見せても非難されず、上司やメンバーに受け入れられている」と感じられることが大切です。

 部下が上司に忌憚のない質問や意見、率直な悩みの相談ができるのも、部下が上司との関係に安心・安全を感じられていることが大前提です。そのためには、上司が率先して自己開示し合える場を作り、相互に自分の気持ちや考えを伝え合うステップを踏むことで、部下に安心感を与えることです。ただし、前回触れたように、部下のプライバシーへの過渡な踏み込みは控え、自らオープンに語りつつ、部下の自然な自己開示に耳を傾けましょう。

 心理的安全性の醸成は、相互理解のための面談を数回行ったからといって、すぐにはできません。上司が意識的に、日々の仕事や対話を通して部下と喜怒哀楽を共にする機会を重ね、お互いの理解が深まり信頼関係が作られる過程で、徐々に進むものです。


「話しすぎ」に注意し、「話を待つ」姿勢で

 上司は、部下との距離を縮めようとするがあまりの「話しすぎ」に、注意が必要です。仕事熱心で優秀な上司ほど、部下との面談や会話の際に、「しっかりと話を深めよう」「できるだけわかり合おう」と考えがちです。しかし、前のめりで対話を始めると、上司が一方的に部下に話し続ける「演説状態」になってしまう傾向があります。部下への傾聴のための面談であったはずが、「部下が黙り込むので、つい焦って自分ばかりが話してしまった」と語る上司は多いものです。

 上司も、まだ十分に心情が通い合わない部下との対話で沈黙が続くと不安になり、沈黙を解消しようと焦り、自分ばかりが語ってしまうのです。しかしこれは逆効果で、部下にすれば上司への遠慮からさらに話を切り出しにくくなります。

 そこで、「沈黙もコミュニケーション」と捉えることです。部下が黙り込んでも焦らず、「考えを整理してから、ゆっくり話してくれればいいよ」と伝え、部下が話すことを待ちましょう。相手を待つことのできる包容力や、相手のペースに合わせられる余裕が、信頼関係づくりには欠かせません。ただでさえ上司は職場で優越的な立場にありますから、部下から本音を引き出すのはとても難しいことと心得ましょう。


「笑顔のトレーニング」から始める

 また、部下との会話中に気をつけたいのは、上司の表情、特に「笑顔」です。そして、上司は決して「仏頂面」で話さないことです。会社側の評価者でもある上司は、部下にとって怖い存在と思われがちです。上司本人は普通な顔のつもりでも、無表情なだけで「機嫌が悪いのでは…」「話しづらいな…」と部下は感じてしまうのです。

 多様な人の育成や活躍に優れ、国のダイバーシティ経営企業にも選ばれた日本レーザーの近藤宣之会長は、社員たちの心を開くために、「笑顔は性格ではなく能力」と自分に言い聞かせ、鏡を見て口角を上げて、ニコニコしながら話すようにトレーニングをしているとのこと。私が初対面で対談した際も、その笑顔に一気に打ち解けた気持ちになれました。また、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会コンサルタントのニック・バーリーは、プレゼンの途中のどのタイミングで笑顔にすれば有効か、緻密に計画したとのことです。部下との信頼関係づくりには、「笑顔のトレーニング」から始めることもよいでしょう。


上司力のベースとなる「愛他主義」

 ここまで、部下との相互理解のための面談や話し方を例示してきましたが、テクニックだけでは信頼は育めません。その大前提として、上司としての「心」を整えるべきです。それを私は「愛他主義」という造語で定義しています。

 「利己主義」に対して「利他主義」という言葉がありますが、利するのが自分でも他人でも、「利」を考える以上、そこには「損得勘定」が働きます。しかし、私は人と人が相互理解を深め、深い信頼関係を構築するには、「損得抜きで、愛情を持って」相手に接することが不可欠だと考えています。上司として部下の仕事の成果を喜ぶこと以上に、部下自身の働きがいや成長を本気で願い、思いやることが重要なのです。



 私が実際に聞いた、ある管理職の体験談を紹介します。彼は、部下時代、優秀な営業マンで、高い業績を評価され課長へとスピード昇進を果たしました。そこで高い目標を掲げ、自分が実行してきた高速回転の営業活動を部下に課し、「この通りやれば、必ず成果が上がる。頑張ろう!」と発破をかけます。しかし、一部の部下から悲鳴が上がり、それが次第に広がり、メンタルを患う者や退職者まで出始めました。上司や人事も看過できない状況です。プレイヤーとして高い成績を誇った彼は、管理職になり初めて大きな壁にぶつかったのです。


上司が変われば、部下も変わる

 悩んだ彼は、人材育成で定評のある先輩管理職に相談しました。そこで、先輩から投げかけられた問いは、「目の前の苦しむ部下がもしも君の息子や娘なら、『それでも頑張れ』と説得するか?」でした。彼はハッとして、「自分の子どもなら…『そんな心身を壊すほどしんどい仕事なら辞めなさい』と言うと思います」と答えました。部下を道具のように扱い、人として慮ることのなかった自分を反省したといいます。

 それからの彼は、部下への対応を改め、目標達成が難しいのはなぜか、どうすればよいと考えるか、部下の率直な意見を聞き、一人ひとり相手の立場になって親身に考えるようになりました。その結果、部下の様子は徐々に変わり、不調者や退職者も出なくなりました。そして、部下からの自発的な工夫や提案が上がり始め、自律的な営業活動でチームの成績も上向いていったのです。

 この事例は、上司が変わることで、部下も職場も大きく変化することを示しています。すなわち、部下に自分の子どもや家族と変わらぬ愛情を持って対すれば、自ずと損得勘定を超えた関係が生まれ、信頼を結び直すことができるのです。上司は「愛他主義」をベースに置き、部下への接し方を内省し続けることが大事なのです。

【 解説 】

違いを認めることから始まる
「コミュニケーション・サイクル理論」

 連載第3回では、支援型マネジメントを進めるための【STEP①】『「相互理解」を深める』の《その2》として、部下との対話で信頼関係を深めるための留意点、そしてその基礎となる「愛他主義」の大切さを述べました。

 それにしても、職場のダイバーシティ(メンバーの多様化)が進むなかで、立場や世代や価値観が異なる部下を理解するのは、決して容易なことではありません。そこで、以下では、私たちFeelWorksが「自分と違う相手を知る」ための理論と方法として開発し、提唱している「コミュニケーション・サイクル理論(以下、CC理論)」を紹介しましょう。

「コミュニケーション・サイクル理論」(CC理論)とは

 今や、40~50代以上の上司・経営者世代が入社し、働いてきた時代とは働く環境が一変しています。働く人たちの意識も大きく変わり、企業・組織のあり方も大きな変革を迫られています。こうしたなかで、上司と部下とのコミュニケーションのすれ違いが頻発していますが、その原因は、上司側が部下の価値観を十分理解しきれず、結果として自分の考え方を一方的に押し付けてしまう固定観念、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)による場合が多いのです。

こうしたなかで、CC理論は人が自分の固定観念や偏見から脱し、コミュケーションを改善するための有効な手法であり、具体的には次の4つのステップから成るものです。(図「コミュニケーション・サイクル理論」参照)。


Step1 違いを認める(相手の違いを前向きに捉える)

Step2 価値観を知る(相手の違いを生む考え方を理解する)

Step3 あり方を定める(自分の考え方・姿勢を改める)

Step4 やり方を変える(自分の行動・働きかけを変える)


 上司と部下が信頼関係を築くためには、上司がこのフレームを活用して部下を深く理解し、自らのコミュニケーションを改善していくことが効果的です。

 以下では、このステップを理解いただくために、「仕事と育児を両立する女性社員の育成支援への取り組み」を例にとって、説明してみましょう。

■「仕事の負荷を下げてほしい…」

 次のような場面を想像してください。あなたの部下である産休明けの女性社員(30歳)から、次のような申し出がありました。

 「育児が大変なので短時間勤務にして頂き、仕事の負荷も下げて頂きたいのですが…。」

 ここで、クイズです。上司であるあなたは、この女性社員に対して次のどちらの対応を取りますか。まず直観で答えを選んでください。

A-① すぐに短時間勤務を認め、できるだけ仕事の負荷を下げよう。在宅勤務も推奨しよう。

A-② 本人と家庭の状況をよく聴き、キャリアアップできる役割と働き方を一緒に考えよう。

 それでは、以下、CC理論に沿ってクイズの答えを考えていきましょう。

■Step1 違いを認める

 40~50代の男性管理職で仕事一筋に働いてきた既婚上司の場合、自分が一家の大黒柱であり、妻は専業主婦かパート職などの場合が多いものです。育児や家事を担った経験は少なく、共働き世帯の大変さも実感できません。そのため「社員として給料を得ている以上、家庭の事情云々より仕事で責任を果たすのが第一」と、部下の申し出に内心は違和感を覚えつつ、「結局、女性は仕事より育児や家庭が優先」と考え直します。そして、職場の中核人材としての活躍はあきらめ、A―①のように本人希望どおり、できるだけ育児に専念させようと決めるのです。

 しかし、本当に「女性は仕事より育児や家庭が優先」なのでしょうか。そう捉える背景には、「男性は仕事、女性は家庭」という、上司の性別役割分担意識からの思い込みがあるかもしれません。意欲的な女性には、育児の負荷は重いものの、責任ある役割を担いたい、キャリアを断線させたくないと考える人も少なくありません。つまり、仕事も育児も共に頑張りたい、でも自信が持てず、苦渋の判断で短時間勤務や仕事の負荷軽減を申し出ている可能性もあるのです。加えて会社が整備する人事制度なので、当然使うべきだという権利意識も芽生えているかもしれません。上司は、こうした女性部下の自分との立場や環境の違い、そして仕事と育児の両立に不安や悩みで揺れ動く現状を察し、理解しようとすることが大事なのです。

■Step2 価値観を知る

 仕事と育児の両立の大変さのなかで、キャリア意識が高い女性ほど、現在の日本企業の働き方自体に不安や疑問を感じている場合が多いのです。最近は働き方改革で過重労働こそ是正されつつあるものの、現場ではまだまだ急な会議やトラブル対応が生じ、残業や出張も発生します。また中堅やリーダーになれば、後輩やチームの支援にまつわる突発事案も生じます。一方の育児でも、子どもの急な病気や看護などで、職場を遅刻早退や休まざるを得ない状況が頻発します。そこで、育児を全うできるかの不安と、職場や同僚に迷惑をかけられない責任意識から、重要な仕事を諦め、勤務時間短縮や仕事の軽減を申し出ている可能性があるのです。

 つまり、ダウンシフトへの希望は、育児や家事を担うためのギリギリの選択で、実は仕事との両方で頑張りたいものの、今の働き方では自信がもてず、不安や遠慮を抱えているかもしれない。むしろ仕事への意欲や責任感の裏返しではないかと、本人に寄り添って考えてみるのです。上司は、女性社員の言動が、単に育児優先の価値観からではなく、仕事との両立の願いを持ちつつ悩む心情からであることを、しっかり理解する必要があります。

■Step3 あり方を定める

 したがって、上司は女性部下からの表面的な申し出をすぐ鵜呑みにしてはいけませんが、とは言え、従来通りの仕事を従来通りの働き方で続けさせることにも無理があります。子育て中の短時間勤務社員のプライベートな時間は、想像を超えた忙しさです。同僚に気兼ねしつつ早めに職場を抜けて保育園に駆け付け、その日の子どもの状況や注意事項を引継ぎます。帰宅後は、子どもの食事、風呂、翌日の登園準備、寝かしつけ、残った家事の片付けなど、重労働が待ち受けます。翌朝も起床から子供の世話と保育園への送り出し、そして出社と、目まぐるしいものです。パートナーの夫が率先して分担すればまだしも、まだまだ片寄りも大きいものです。

 そこで、上司は、「長時間で責任の重い仕事」か「短時間で責任の軽い仕事か」という二者択一の発想を捨て、「短時間で責任の重い仕事」という第三の選択肢を考える必要があります。どうすれば短時間勤務や柔軟な働き方を通して本人がキャリアアップをめざし、会社の中核社員として貢献できるか、本人と相談しながら共に考えることが大切です。

 以上のことから、クイズの妥当解はA-②です。上司は、部下と一緒に本人の仕事の棚卸しと見直しを行い、育児や家庭の状況等もよく聴き、本人のキャリア希望も確認しながら、前向きな役割と働き方を共に考えるのです。

■Step4 やり方を変える

 具体的には、対話を通じて、部下の仕事を、止めてもいいもの、改善すべきもの、他者と分担できるもの、本人がさらに深め伸ばしたいもの、などに仕分けていきます。そして短時間勤務や在宅勤務でも十分に本人の力を発揮できチームや会社に貢献できる仕事を精選します。

 ここでのポイントは、短時間勤務や在宅勤務でも、仕事をレベルダウンさせないことです。例えば、従来の実績を踏まえて、これを機にリーダー役を任せることも考えられます。これまで、リーダーは常に会社で、リアルタイムで後輩を指導すべきと考えがちでしたが、リモートワークの普及でこの常識も一変しました。まだ発展途上で課題はあるものの、遠隔での効果的なマネジメントも可能になりつつあるのです。

 そもそも、上司になることは、自分で手を動かすプレイヤー業務から人を動かすマネジメント業務へと移行しますから、遠隔でも十分可能なはずです。要所要所の1on1ミーティングで仕事の目的共有や相談をしっかり行えれば、日常の意思疎通や会議はメールやチャット、ZOOMやTEAMS等で直接顔を合わせずともこなせます。こうした新しいチーム運営に精通すれば、仕事と育児の両立推進のみならず、リモートワークを取り入れたよき働き方改革のモデル例にもなるでしょう。


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第2回

【STEP①】「相互理解」を深める《その1》
業務のやりとりの前に、面談で信頼関係の土台をつくる

【紙上講座(新聞掲載)】

誤解を生まないコミュニケーションを取れるように、相互理解を図る

 上司が支援型マネジメントを始める最初のステップは、部下との「相互理解」を深め、信頼関係の土台をつくることです。上司と部下が互いによく知り合うことで、相互に安心感と信頼感を持ちやすくなります。そして、上司は部下に仕事を任せやすくなり、部下は任された責任の範囲で自律的に働けるようになるのです。

 相互理解による信頼関係の形成は、今年の6月に法律が施行された職場のパワハラ防止にも繋がります。今や、誰が見ても明らかな暴力や暴言によるハラスメントは減っていますが、問題は「グレーゾーン」です。すなわち、上司が意図せず部下に行った言動の「あや」が、部下を傷つけたり萎縮させたりして、不満が鬱積して引き起こされるハラスメント・リスクを減らすのです。部下が過敏になり「ハラスメントだ」と感じるのは、往々にして上司への信頼感がないためです。信頼する上司の言葉であれば、多少厳しく、言葉足らずでも、部下は真意を受け止めやすくなります。「自分を思って叱ってくれているんだ」と感じれば、前向きに応じられるからです。

 誤解を生まないコミュニケーションが取れる関係づくりのために、上司はまず意識的に部下との相互理解を深めましょう。


最初にやるべきことは「上司からの自己開示」

 上司は部下の仕事への思いや価値観、職場内外での関心事、また家庭の育児や介護など仕事に影響する事情や悩みなどを、よく理解しておくことが大切です。そこで、部下との面談の場を設け、「傾聴」することから始めましょう。しかし、この傾聴が実際にはなかなか難しいものです。

 研修で上司の皆さんに「部下の話をじっくり傾聴しましょう」とお話しすると、早速部下を呼び出し、根掘り葉掘りと事情聴取をしてしまう例があります。しかし、部下からすれば、上司に呼ばれ唐突に「今の仕事をどう思うか」「将来のキャリアをどう考えるか」「プライベートで悩み事はないか」と聞かれても、即答できません。また、部下には上司に言いづらいことや知られたくないこともあるでしょう。そこに、上司が突然あれこれと畳みかけて質問すれば、警戒して身構えてしまうばかりです。

 そこで、部下から話を聴こうとする前に、上司の方から自己開示をすることをお勧めします。「自己紹介は自分から」と、まず上司自身がどのような考えや気持ちをもっているのか、部下に対してオープンマインドで話すのです。自分はこれまでどんな仕事の経験を持ち、どのような思いや目標を持って仕事をしてきたか。これからどのように職場や仕事に貢献したいかなど、飾らずざっくばらんに話します。また、自分をよく知ってもらうためには、どのような人生を歩んできたか、趣味や家族のことなどプライベートも含めて話すとよいでしょう。


あえて自分の「弱み」を語る

 自己開示の際に気をつけたいのは、上司が自分の武勇伝を延々と演説したり、価値観を押し付けないことです。ポジティブな話をしようとして、自分の上げてきた成果や強みや得意ばかりを強調してしまうと、部下にはプレッシャーとなり息苦しいだけです。一方で、社会状況も大きく変化しており、かつての上司の成功体験がそのまま通用するとも限りません。むしろ、部下にとって時代遅れで陳腐な話と受け止められれば、反感や失望を生み逆効果になりかねません。

 そこで、あえて自分の「弱み」をさらけ出す話をしてみましょう。「自分はこんな失敗をして、こんなことに苦しんだこともあったんだ…」といった失敗談を語るのです。また、自分が不得意や苦手なことを開示するのもよいでしょう。上司が弱みを見せることで、部下は「上司も万能ではなく、弱みや人間的な部分があるのだな」と感じ、親近感がもちやすいのです。その延長で、部下が「上司も、不得手な部分では自分を頼りにしてくれる」と思えるようになれば、上司がSOSの際にも率先して手伝ってくれるものです。また、部下自身も上司をより深く理解できれば、自己開示がしやすくなるのです。


時代感覚のズレに気をつける

 プライベートや家庭の話題にも、注意点があります。上司世代の40~50代では、配偶者が専業主婦やパートタイマーで働く場合も多く、自然と「自分が一家の大黒柱だ」と自認している人もいるでしょう。しかし、そうした感覚や価値観をベースに家族や家庭生活の話をすると、部下に強い違和感を与える場合があります。なぜなら、今の20~30代は共働きが普通であり、夫婦がパートナーシップで家事や育児を分担するのが当たり前だからです(図参照)。



 それなのに、上司が無意識のうちに自分の古い性別役割分担の意識や実状に基づく話をすると、大きな感覚のズレを感じてしまうのです。もはや、「イクメン」という言葉にすら違和感を持つ若者もいると理解する必要があります。

 なお、部下のプライベートの話題は、上司側から無理に聴き出さないことです。上司の自己開示に沿って部下が望めば、自然と話を聴く形で進めましょう。


部下との間に「共通項」を見つける

 部下との相互理解への早道の一つは、お互いの「共通項」を見つけることです。初対面の人でも、出身地や出身校が一緒だったり、同じ趣味を持っていることで話が弾み、ぐっと親近感がわいた経験はあるでしょう。人は他人との共通項が見つかると親密な関係を持ちやすく、安心感や信頼感も持ちやすいのです。上司が積極的に自己開示をして様々な経験や関心事を語る中で、あるいは部下の話を傾聴する中で、お互いの共通項が見つかればしめたものです。共通して楽しめる話題や共感し合える物事があれば会話も盛り上がり、その後も時々情報交換できるなど、相互関係はぐっと近づくことでしょう。

 部下が遠慮がちであれば、上司が自己開示した話について、何かさらに聞きたい事はないか、「質問があれば何でも聞いてほしい」と伝えましょう。また「今日の話の中で、お互いに共通すると感じたことは?」と率直に聞くのも良いでしょう。こうした投げかけや質問で共通項となる「話のタネ」をまくことが、部下の自己開示のきっかけにもつながります。

 人は相手を知らないと警戒感や緊張感が解けませんが、相手との共通項がみつかり共感点を確かめ合えれば、心の距離が一気に縮まるのです。

【 解説 】

部下への理解を深めるための「傾聴面談」のすすめ

 連載第2回では、支援型マネジメントを進めるための【STEP①】『「相互理解」を深める』の《その1》として、部下との信頼関係づくりに向けた面談による相互理解のポイントを解説しました。そこで、以下では、この面談をよりしっかりと行い、部下との相互理解を深めながら部下育成につなげていくために、私が開発した「メンバー育成計画シート」(図参照)を用いた傾聴面談の準備とプロセスを解説しましょう。



 この傾聴面談は、仕事の期初等(年度始め等)に設定するとよいでしょう。面談では、まず部下の仕事への思いやキャリア志向、また強み、弱みなどへの理解に努めます。その上で、仕事の目的や意義を共有しながら、本人に任せる役割・仕事を決めていくための手がかりを掴み、互いに確認するものです。面談は部下1人1時間程度で、上司は「メンバー育成計画シート」を手元に置き、肯定的な姿勢で傾聴していきます。以下、手順に沿って説明します。


(1)部下のキャリアを概観した上で、会社や仕事への思いを聴く

 シートの左側一列は、部下のキャリアヒストリーを整理する部分です。部下との面談に先立ち、分かる範囲で本人の経歴や現在の担当業務、将来のキャリアの希望などを記入しておきます。面談では、それらを確認・補強する形で本人の話を聴き取ります。経歴や担当業務で本人の将来に役立つ部分やさらに伸ばしたい部分などは、詳しく聴くとよいでしょう。本人の将来のキャリアへの希望も改めて確認していきます。

 シート右側の上段では、部下が会社や仕事に抱いている満足感や充実感、また一方で不満や悩みに思うことを聴き取ります。ブラスの内容や感想は話しやすく、マイナスの意見は打ち明けにくいものです。上司は、できるだけ率直な思いを語れる雰囲気づくりに留意しましょう。また、また同様に部下の仕事や役割についての本人の思いも、プラス・マイナス両面で聴き取ります。満足と不満のそれぞれの要因を、無理のない範囲で詳しく正確に聴き取ることが、本人の理解と今後の育成に役立ちます。


(2)部下の「強み」を認め、「弱み」をフォローする

 以上を踏まえ、シートの右側・中段の本人の「強み」と「弱み」について話題を進めます。上司が感じる内容は予め記入しておきます。

 部下は、いきなり「あなたの強みは? 弱みは?」と尋ねられても答えにくいものです。そこで、まず本人の「持ち味」に着目してみましょう。本人が感じているこれまでに成果が上がったと思う仕事や、やりがいを感じた仕事は何か。一方、苦手なことは何かといった話題から始めて、話を深めます。本人の持ち味への光の当て方によって、強みと弱みが浮かび上がってくるものです。

 ここでは第一に、部下本人が自覚している強みと弱みは何か、自己開示を促します。そのうえで、上司の評価も伝えながら、双方の認識をすり合わせていきます。本人が気づいていない強みはしっかりと伝え、励まします。また弱みの指摘は本人を萎縮させがちですが、強みと表裏一体なことも多いので、個性として前向きに捉えさせたうえで、より成長するための補強策を話し合うのが効果的でしょう。部下の強みはさらに伸ばし、弱みは本人の努力と上司・同僚の協力で補強していくのが、「支援型マネジメント」のめざすところです。

 面談での対話から、すでに部下への動機づけがスタートしています。部下の思いや自己認識の傾聴に努めながらも、よきアドバイスや励ましによって上司と部下の信頼関係の基礎をつくっていきましょう。


(3)将来への希望と期待をすり合わせる

 シート右下の最終項目は、上司の部下に対する「将来への期待」です。以上の傾聴と対話を通して、部下の今後の仕事への希望や自己啓発の課題などが明らかになってきました。そこで、部下の意向を十分に踏まえながらも、上司としての期待を整理し、本人にしっかりと伝えます。今後3〜5年の将来を見据え、部下にどのように成長し、活躍をしてほしいか。そのために、当面どのような役割や仕事を任せ、期待を持つのか。その実現に向けて、上司がいかにフォローしていくか。日常の報連相や、定期的な打ち合わせや面談による支援、部下の自己啓発への応援方法なども含めて、上司の関り方も明らかにすることが大切です。

 上司と部下の対話では、全てが完全に一致し、同意できる内容ばかりではないでしょう。この認識のズレも、上司はきちんと自覚することが必要です。その上で、そのズレをいかに解消していくか。部下に粘り強く働きかける事柄や、互いに調整と努力をし合う点は何か。また上司自身が反省し変わらなければならない点もあるでしょう。部下の優れた点からは謙虚に学び、共に自分も育つ「共育」の視点が大事です。傾聴面談は、上司自身の内省と成長の場であると心得ましょう。


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第1回

いま求められる「上司力」とは?

【紙上講座(新聞掲載)】

コロナ禍で浮き彫りになった上司の悩み

 コロナ禍でリモートワークが広がり、あらためて「上司力」―現場管理職のマネジメントとリーダーシップの力が問い直されています。

 新型コロナウィルス感染防止のため、多くの企業が十分な準備の間もなく、急きょ在宅勤務などのリモートワークを導入しました。そうした中、上司に部下マネジメントへの不安を訊ねた調査では、「生産性が下がっているのではないか」(48.0%)、「報連相をすべき時にできないのではないか」(32.7%)、「仕事をサボっているのではないか」(32.7%)、「仕事ぶりが見えない期間の人事評価をしにくいこと」(30.0%)、といった回答が寄せられました(「テレワークと人事評価に関する調査」[2020年4月・あしたのチーム]。テレワークはリモートワークと同義)。すなわち、「部下の仕事ぶりが見えず、報連相に不安を持ち、サボってはいないかと疑心暗鬼に陥り、人事評価にも悩む」上司の姿が浮き彫りになったのです。


 もちろん、日本郵政グループの現場をはじめ全ての職場がリモートワークを導入できたわけではありません。しかし、今後さらに多くの仕事と共に社内のマネジメントやコミュニケーション手段のリモート化、オンライン化は進むでしょう。また、調査で挙げられた上司の不安は、コロナ禍に関係なく、日々のマネジメントでの関心事ばかりです。実は、真面目で優秀なプレーヤーだった上司ほど、こうした悩みを抱えがちです。コロナ禍で新たな問題が起こったというよりも、もともとあった問題が強く顕在化したといえるでしょう。

 そして「部下の仕事ぶりが見えない」「思うように成果を上げられない」という不安と焦りから、上司は部下への監視や統制を強めがちです。実際に、リモートワークになり、熱心な上司ほど部下の仕事時間の管理を徹底し、報告を執拗に求め、仕事内容に過渡に干渉し、指示命令を多発する例や、ITツールで常時監視することで部下がメンタルを病んでしまう例なども生じています。


クイック・ウィン・パラドックスの罠

 では、この真面目な上司が陥りがちなリスクを、どのように理解すればよいでしょうか。ハーバード・ビジネススクールでリーダーシップを教えるリンダ・ヒル教授が、新任管理職にありがちな問題行動を調査分析して明らかにした「5つの落とし穴」がヒントになります。

 これは、①隘路(あいろ)に入り込む―狭い路地に迷い込んだように周囲が見えなくなり、自分で全てを解決しようとする、②批判を否定的に受け止める―部下の異なる意見を自分への批判と受け止め、聞き入れられなくなる、③威圧的である―管理職の自分に権限があるからと、一方的に命令や叱責を行う、④拙速に結論を出す―部下の意見や状況を顧みず早く解決しようと、決めつけて判断する、⑤マイクロ・マネジメントに走る―部下を自分の操り人形のように微に入り細に入り指示し、動かそうとする…という行動です。

 こうなると、部下の心は離れてしまい、やる気を失い、マネジメントは空回りし始めます。すなわち、早い成果を出そうとの焦りが、かえって成果を遠のかせるジレンマ―クイック・ウィン・パラドックスの罠に陥ってしまうのです。

 クイック・ウィン・パラドックスはコロナ禍以前に打ち出されていたコンセプトですが、部下の仕事ぶりが見えづらい焦りから、さらに起こりやすくなっているといえます。つまり、リモートワークの急速な普及によって、本質的なマネジメントの変革が待ったなしの急務になったといえるのです。これを機に、上司に求められる本来の役割を正しくとらえ直し自己変革を果たし、ウイズ&アフターコロナのニューノーマル下でも、上司の本領を発揮することが望まれます。


管理職から支援職へ

 それでは、本物の上司力はどのように身につけ、発揮すればよいでしょうか。結論から言えば、上司は性悪説で部下を監視し管理しようとするのではなく、本人の意欲と可能性を信じ、その持ち味と能力を十分開花し発揮できるよう支援する姿勢に変わることです。すなわち管理職から支援職へ自己変革すべきです。上司の本来の役割は、部下に指示命令をして従わせることではなく、部下が自律的に働ける環境を整え、一人ひとりが働きがいを感じながら成長・活躍する伴走者だと心得えましょう。

 そこで、上司が身につけ実行すべきは、次の「支援型マネジメントの5つのステップ」です。

 連載の第2回からは、これを順に解説していきます。

【 解説 】

ニューノーマル時代のマネジメント課題の背景とは?

 連載第1回では、コロナ禍によるリモートワークの急速な普及をきっかけに、鮮明に浮かび上がってきたマネジメント課題を指摘しました。しかし、これらの課題は、これまでのマネジメントにも潜在していたもので、ウイズ&アフターコロナのニューノーマル時代には、さらに顕著になるものです。ここでは、これらの課題の進行を促す、より本質的な時代背景を俯瞰しておきましょう。

日本型雇用の限界とジョブ型・成果評価型の職場へ

 背景の第一は、今後大きく進む「メンバーシップ型」雇用から「ジョブ型」雇用へのシフトの動きです。メンバーシップ型は、日本企業特有のいわゆる終身雇用体制のもと、社内での人材育成、年功による賃金アップなどを特徴としてきました。入社時に仕事の内容は確定されず、社員は会社の「メンバー」となり、人事異動や転勤などに柔軟に応じていきます。これに対し欧米流のジョブ型は、予め職務内容を子細に定め、それに見合った能力の社員を雇い、仕事に応じた賃金を支払います。仕事も評価基準も明確ですが、その仕事がなくなれば雇用契約も終了となる仕組みです。メンバーシップ型が「就社」であるのに対し、ジョブ型は本来の意味での「就職」だと言えるでしょう。

コロナ禍以前に、日本企業は経済のグローバル化と第4次産業革命などを背景に、日本型雇用の維持が困難となり、大きな流れはジョブ型へとシフトし始めています。今回のリモートワークの急速な普及も、ジョブ型への移行を加速させています。職務内容が明確なジョブ型労働は成果主義とも結びつきやすく、これまでの時間による仕事の管理・評価から、成果による管理・評価への変化の流れも促すでしょう。

そうなると、上司には、一人ひとりの社員の仕事の目的や目標をより明瞭に言語化し共有する力、そして仕事の進捗と成果を正確に把握し、的確に支援し評価する力が求められるのです。

ダイバーシティの進展とキャリア自律支援の時代へ

 背景の第二は、職場のダイバーシティ(多様性)の進展です。経済のグローバル化は日本の内なる国際化を進め、外国人労働者が増加します。また、既に叫ばれて久しい女性活躍推進もこれからが本番で、育児や介護と両立させながら仕事を継続し、職場の中核的担い手に成長できる環境整備が不可欠です。さらに、高年齢者雇用安定法の改正等により、企業には社員の70歳までの就業確保や独立の支援が努力義務化され、ミドル・シニアの活躍支援も求められます。一方、非正規社員の増加でメンバーの雇用形態は多様化し、さらに副業解禁の流れで複数の仕事を持つ社員も増えていくでしょう。社内外での多彩な働き方を認め、総合的にサポートすることが必要になります。

 若手社員は、終身雇用と年功序列が崩れ、ジョブ型に舵を切り始めた企業社会のなかで、もはや「昭和型」とは全く異なるキャリア観で働いています。会社には頼り切れないため、人生100年時代を働き抜くためのキャリアを自ら築いていかざるを得ない世代です。自分のキャリアにとっての仕事の意味や将来性を考え、働きがいを実感できる仕事を望み、副業や転職も視野に入れながらキャリアを磨いていくことに真剣です。

 以上のように、いずれの世代・背景の社員にとっても、今後は働きがいの実感とキャリア自律が共通のテーマです。そのなかで上司には、多様な部下一人ひとりを丁寧に理解し、キャリアに寄り添い、日々の仕事を支援するとともに、チームとして束ね成果を出していくという、難しいかじ取りが求められるのです。


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